2016年11月26日

GPIFの2016年7~9月の運用成績は2.4兆円のプラス―粛々とリバランスしているのが見事



定例の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)ウオッチです。2016年第2四半期(7~9月)の帳簿上の運用益は+2兆3746億円、期間収益率は+1.84%でした。

平成28年度第2四半期運用状況(GPIF)

3四半期ぶりにプラス収益となりましたが、例によってプラス収益だとマスメディアの扱いも小さいので、せめてこんな小さなブログの中だけでも特筆しておきたいと思います。GPIFのような年金基金というのは、いわばインデックス運用による長期・国際分散投資のプロとでもいうべき存在ですが、あいかわらず見事な運用を行っています。収益がプラスになっているから凄いのではありません。セオリー通りに粛々とリバランスしていることが見事なのです。

しばらく期間収益がマイナスとなることが続いていたGPIFですが、久しぶりにプラス収益を上げています。マイナス収益となるとマスメディアが大々的に取り上げるのに、プラス収益だとサラッと流されてしまうのが悲しいところでしょう。もっとも、期間収益といってもあくまで帳簿上の評価額ですから、そもそも短期的な変動で一喜一憂するのが間違いなのです。

それよりも注目すべきは利子・配当収入です。7~9月だけで利子・配当収入は5012億円でした。なぜ利子・配当収入が重要なのかというと、これは帳簿上の評価額の変動ではなく、実際にGPIFに入金された現金だからです。つまり実体をともなった具体的な投資収益ということ。さすがにGPIFほどの規模になると、わずか3カ月で5000億円以上のインカムゲインがあるのですから凄いものです。

さらに「さすがプロの仕事だ」と思わずうなってしまったのが、粛々とリバランスが実行されていることです。この点はロイターの記事が上手くまとめています。

GPIF、国内債券1兆2200億円程度売り越し=7─9月期(ロイター)

第1四半期まで株式が低迷していたことでポートフォリオの国内債券のウエートがやや高まっていたわけですが、きちんとこれを一部売却することで目標とする資産配分に向けてポートフォリオを調整したわけです。これがプロの仕事というものです。

そもそも年金基金をリスク資産で運用するべきではないという批判がありますが、それはGPIFの運用の問題ではなく、公的年金制度がどうあるべきかという制度論なので、ここでは議論しません。あくまで運用そのものを見れば、あいかわらず健全な運用が行われていることがよく分かります。

GPIFの運用というのは、インデックス運用による長期・国際分散投資のお手本のようなものです。最近、個人型確定拠出年金(iDeCo)への関心が高まっているわけですが、iDeCoを運用する人にとっても、GPIFのやり方はじつに参考になるでしょう。そういう観点から見れば、GPIFの運用に対する見方が変わってくるのでは。あるいはiDeCoが普及するためにも、GPIFの運用を通じて本物の長期・国際分散投資とはこういうものなのだという認識が広まっていけばとも思うのです。

【ご参考】
YouTubeのGPIF公式シャンネルに2016年度第2四半期運用状況の説明動画がアップされています。

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