2016年11月21日

株を買う理由は「生活防衛だす」



米国の次期大統領がドナルド・トランプ氏に決まってから、文字通りの“トランプ・ラリー”で、米国株が凄い勢いで上昇しています。いろいろな人が、いろいろな理由を解説していますが、やはり米国株についてはこの人、広瀬隆雄さんに聞かなければなりません。そう思って広瀬さんのブログを読んで驚きました。

株はなぜ上がったのか?(Market Hack)

なんと米国の投資家が株を大急ぎで買っているのは、なにも米国経済の明るい未来に賭けているわけではないということです。それどころか「生活防衛だす」とまで言うから、じつにふるっている。なぜなら、こういう観点はとても勉強になるからです。

あいかわらず最高に面白い広瀬さんのブログですが、今回も絶好調です。それで、なぜ株が上がっているのかということですが、やはりトランプ氏が減税政策を掲げているからだそうです。それがはっきりしたのが、首席補佐官に元共和党全国委員長を務めたラインス・プリーバス氏を指名したこと。プリーバス氏は、やはり共和党の最高幹部であるポール・ライアン下院議長と同郷の親友ということで、この人事の意味を広瀬さんは次のように解釈しています。
だから今回、トランプがプリーバスを首席補佐官に任命したということは「ごめん、俺が悪かった。ついては税制改革は、あんたらでやりんしゃい」と宣言したも同然なのです。
ただ、ここまでの分析ならごく普通なのですが、さすが広瀬さんは鋭いと思わせるのが、その後の展開です。もし実際にトランプ政権が減税を断行した場合、米国政府は大幅な歳入不足に陥ります。当然、不足分は国債発行で賄わなければなりませんが、そうなると米国の財政規律は緩む。だからこそ、米国の投資家は今、大急ぎで株を買っているとして、次のように指摘しています。
つまり株式市場の参加者は今回のトランプ減税がシリアスに無責任な提案であることを重々承知しているし、アメリカの財政の健全性はメチャクチャになることも熟知している……

だからこそ、株をかっているのです!

明るい未来に賭けているんじゃ、断じてない。

生活防衛だす。
なぜ株を買うことが生活防衛になるのか。ようするにインフレ対策です。政府の財政政策が拡大されれば、有効需要の増加からインフレ率が上昇する可能性があります。財政規律が失われれば、インフレがさらに加速する危険性もあります。実際に米国は1960年代にベトナム戦争と公共サービス拡大による支出拡大を行ったことで、その後長らく高いインフレ率に悩まされた過去があります。

トランプ氏の登場で、なんとなく米国ではインフレへの不安が増しているのかもしれません。そして、インフレに備えるとなると、やはり「資産の一部を株で持っておくしかない」というのは自然な判断でしょう。株は不動産と並んで最もインフレに対して対抗力を持つ資産であることは、過去のデータから明らかだからです。そして米国の投資家の判断の自然さは、長らくインフレとは無縁の生活を送ってきた日本人には、いまひとつピンとこない。だからこそ、米国の投資家が株を買う理由は「生活防衛だす」という指摘は、とても勉強になるのです。

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