2016年11月17日

投資や運用に関わる人は、チャラチャラしてたらイカンのですよ



なにげなくブルームバーグのニュースを読んでいたら、非常に面白い記事がありました。なんでも米国の年金基金や寄付金基金がヘッジファンドから急速に資金を引き上げているとか。

ヘッジファンドにはこりごり-米年金基金や寄付基金が別れ告げる(ブルームバーグ)

ヘッジファンドはコストが高い上にリターンが期待はずれとなるケースも多く、なかなかコストの合理性を受益者に説明できなくなっていることが最大の要因のようです。ただ、それ以上に面白かったのは、もうひつの理由です。それは、ようするにヘッジファンドの運用者の態度が悪いということ。言われてみれば確かにその通りで、妙に納得感がある理由です。やっぱり他人の資金を使った投資や運用に関わる人は、チャラチャラしてたらイカンのですよ。

記事によると、米国中の年金基金や寄付金基金、財団がヘッジファンドとの付き合いに終止符を打とうとしているとか、そのひとつである米ケンタッキー州職員年金基金はヘッジファンドに投資していた資金8億ドル(約870億円)の引き上げを決定しました。基金の最高投資責任者であるデービッド・ピーデン氏は、資金引き上げの理由としてリターンが期待はずれだったことに加えて、次のように説明しています。
ヘッジファンドは高リスクで、運用している連中は大金持ちの道楽者という世間一般の認識も理由の一つだと説明。積み立て不足で加入者が拠出増を求められている中、「監視の目は厳しい」と話した。
コストが高い上にリターンが期待はずれ。なのにヘッジファンドの運用担当者は高額の報酬をもらっている。ようするにヘッジファンドを運用している人の生活態度が悪い。そんな連中に大切な資金を預けるのは馬鹿らしいし、そもそも受益者も納得しないということです。

こういう受益者の認識をバカにしてはいけないと思う。現在は世界的に大変な運用難の時代(先進国を中心とした歴史的低金利が理由)です。そういった投資環境では、他人の資金の運用に携わる人は、日頃の生活様式も含めて真摯な気持ちで取り組まないと大変な反感を買うということです。その意味で米国のヘッジファンドの凋落は自業自得といったところでしょうか。

そういえば『211年の歴史が生んだピクテ式投資セオリー』という本によると、スイスの大手プライベートバンクであるピクテの社用車はアウディA4かA3ばかりで、最高幹部であるパートナー(共同経営責任者)はトラムなど公共交通機関を使って通勤しているとか。フェラーリで通勤した若手社員はクビになりかけるなど、その質素さは徹底している。さすが本場の名門PBは生活様式としても常識があるのです。

こういう生活様式の在り様に対する常識的な判断力というのは非常に大事だと思う。日本でも怪しげな投資を勧めてくる情報商材屋などは、盛んにキラキラ系の生活様式をアピールして投資家を惑わそうとするのですが、そういった態度に対して「羨ましい!」と思うのではなく「投資家を馬鹿にしているのか?」と感じるべきでしょう。なぜなら「お前が贅沢するための金は、誰から取っているものなのだ?」という疑問を持つべきだからです。

他人の金を預かって運用するということは、大変な責任が伴う行為です。だからこそ真摯な気持ちで取り組まなければならない。その真摯さは、生活様式すべてから表現されるものです。だから、本物の運用の達人で派手な生活をしている人はいません(例えば、バフェット爺さんとか)。やっぱり、投資や運用に関わる人は、チャラチャラしてたらイカンのです。

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