株式と債券、国内と海外といった異なる値動きをする資産でポートフォリオを組む国際分散投資を行う場合、必ず実行しなければならないのが定期的に各資産のウエートを目標とする配分に調整するリバランスです。なぜリバランスが必要かというと、ポートフォリオの資産配分が崩れることで最初に想定したリスク・リターン量から逸脱するのを防ぐためなのですが、もうひとつはリターンが向上するという“リバランス・ボーナス”効果を狙うということがあります。この点で非常に興味深いシミュレーション結果が出ました。
リバランスで9%も成績アップ 投信の分散投資(NIKKEI STYLE)
なんとリバランスを定期的に行ったポートフォリオは、リバランスを一切行わなかったポートフォリオと比べて過去10年リターンが9%も上回るケースがあったとか。あくまでの過去のデータに基づくシミュレーションですから、確実にリバランス・ボーナスが発生することを証明するものではありませんが、やはり国際分散投資においてリバランスは大切だという思いを強くさせるのに十分な結果です。
シミュレーヨンでは国内株式、国内債券、先進国株式、先進国債券の各インデックスファンドの過去10年間のデータを使い、5%刻みで各資産のウエートを変更した全1771通りのポートフォリオでリバランスの効果を確認しています。その結果は、次のようになりました。
放置したままに比べ、大半のケースでリバランスした方の10年リターンがアップした。リバランス間隔別に放置した場合とのリターンの差を集計したところ、間隔1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、6カ月、1年の順にリバランスした方が平均で5.3%、5.6%、6.1%、5.9%、6.6%、4.8%上回った。また、均等配分のポートフォリオでリバランスを行った場合とリバランスしなかった場合のリターンも比較し、次のようにまとめています。
具体的な例でリバランスの効果を示すと、4資産に均等配分(各25%の配分比率)した場合について、リバランスせずに放置した場合と6カ月おきにリバランスした場合の運用成績の推移をグラフにした。10年リターンの差は9%に達した。9%とは驚きの数字です。私もある程度はリバランス・ボーナスが発生する可能性は高いと思っているのですが、これほどの数字が出るとは驚き。ただし、過去10年というのは、リーマン・ショックによる株式の歴史的下落とその後の回復というかなり特殊な相場環境もありますので、そこは差し引きして考える必要がありそう。ただ、それでもリバランス・ボーナスが発生する蓋然性の高さをうかがわせるには十分な結果です。
なぜリバランス・ボーナスが発生するのかというと、このメカニズムは意外と単純です。ウエートが増えている資産というのは値上がりしている資産あり、ウエートが下がっている資産は値下がりしている資産。この配分を調整するたにリバランスするというのは、値上がりしている資産の一部を売却し(利益確定売り)、値下がりしている資産を買い増すこと(ナンピン買い)。つまり、リバランスというのは利確・ナンピンという非常に基本的な投資手法を同時に実行することです。これがうまくハマれば、リターンが向上するわけです。
インデックスファンドによる国際分散投資を行う場合、定期的なリバランスは必ずしなければならない。そもそも値上がりしている資産というのはリスクも大きい資産の場合が多いですから、それがオーバーウエートのままに放置するのは、下手をするとポートフォリオが過剰リスクの状態になっている危険性があるからです。加えて、リバランス・ボーナスも狙えるわけですから、まさに一石二鳥なのです。
ただし、通常の口座以内で値上がりしている資産を売却すると余計な課税コストがかかることが多いので、普通は値下がりしている資産を多く買い増して全体の配分を調整するノーセル・リバランスがお勧めです。ただし、この場合も投資総額が大きくなってくると、知らない間にリスク過剰な状態になりがちなので注意が必要。積立投資の場合なら、値上がりしている資産の定期購入を一旦停止し、その分を値下がりしている資産の追加購入に充てることで徐々にリバランスする方法も有効です。これなら定期的な資金投入額は変わりませんから、リスク過剰になる危険性を回避できます。確定拠出年金(DC)口座なら口座内の売却益は非課税なので思い切ってリバランスすることができます。というか、DCの場合は拠出額に上限があるので追加投資によるノーセル・リバランスがやりにくいのです。
そんなわけで、やっぱりリバランスは大切ということ。ただ、投資する資産カテゴリーが4~5カテゴリー程度なら手動でリバランスしてもそれほど負担はありませんが、新興国株式・債券やREITまで含めたポートフォリオを組むと、資産カテゴリーが8個ほどになります。実際にやってみると分かりますが、手動のリバランスが非常に面倒です。そんな場合は、低コストなバランス型インデックスファンドを購入して、完全ほったらかし投資に徹するというのも有効な方法です。NISAのように売却・購入ともに非課税枠を消費してしまう口座での投資にも、この方法は有効です。
インデックスファンドによる国際分散投資は、投資対象の選択についてはそれほど時間も手間もかける必要もありません。しかし、ポートフォリオのメンテナンスには、やはりそれなりの気を遣わなければなりません。そういうささやかな努力の結果として、わずかですが“リバランス・ボーナス”が発生する可能性があるということでしょう。