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2016年10月15日
根強い人気の「世界経済インデックスファンド」―特徴のあるコンセプトへの支持は厚い
twitterのやり取りで気づいたのですが、SBI証券の投資信託積立設定件数の月間人気ランキング(2016年9月)が非常に面白い。トップ10すべてがノーロードの低コストインデックスファンドとなっているところにジワジワとインデックス投資が普及していることをうかがわせますし、ランクインした商品のほとんどが最近登場した“超”低コストファンドというあたりにも積立投資家の感度の高さをうかがわせます。ただ、それよりも驚いたのが、堂々のランキング1位が三井住友トラスト・アセットマネジメントのバランス型インデックスファンド「世界経済インデックスファンド」だったことです。コスト面では競争力を失いつつあるファンドですが、にもかかわらず根強い人気が続いています。特徴のあるコンセプトへの投資家の支持が厚いということでしょう。
SBI証券は多くの積立投資家が利用する証券会社ですが、2016年9月の投資信託積立設定件数人気ランキングは次のようになりました。
大和証券投資信託委託の“超”低コストインデックスファンドである「iFree」シリーズがいきなり4本もランクインしています。また、三井住友TAMのSMTシリーズに新たに加わった「SMT米国株配当貴族インデックス・オープン」「SMT日本株配当貴族インデックス・オープン」の人気も高い。しかし、こういった新登場のファンドを抑えて堂々の1位は、「世界経済インデックスファンド」となっています。
インデックスファンドはコストの低さが最大の魅力ですから、最もコストの低いファンドに人気が集中します。iFreeが人気を集めている理由です。一方、世界経済インデックスファンドは信託報酬が年率0.5%(税抜)。十分に低コストですが、iFreeなど最近登場した“超”低コストインデックスファンドと比べると見劣りします。にもかかわらず根強い人気があるのはなぜか。たぶんそれは資産配分に関するユニークなコンセプトが支持されているからでしょう。
世界経済インデックスファンドは世界の債券と株式に50:50で投資するバランスファンドですが、ユニークなのが資産配分の基準。債券と株式ともに国内、先進国、新興国のウエートをGDP総額の比率に合わせて保有することで「世界経済全体の発展を享受する」ことをファンドの目的としています。この発想が非常にユニーク。GDPの成長率と株式や債券のリターンにどれだけの相関性があるのかは議論のあるところですが、新興国にまで幅広く投資して、世界経済の成長を丸ごと享受してしまおうというコンセプトが、いろいろな意味で“ロマン”を感じさせるのでしょう。かくいう私も、そういったロマンに魅せられて、このファンドを積立投資のコア商品に位置付けています。
バランス型インデックスファンドでも、こういったユニークなコンセプトを持つファンドは十分に魅力的です。より低コストな個別ファンドを同じウエートで組み合わせた方がコストを低く抑えられるという考え方もありますが、世界経済インデックスファンドの場合はGDP比率なので、個別ファンドを使って同じポートフォリオを自前で組み立てようとすると、やはり自分でGDP比率を調べる必要があって非常に面倒です。しかも6資産カテゴリーに投資していますから、リバランスの手間も馬鹿にできません。このあたりが世界経済インデックスファンドの人気の秘密なのでしょう。
世界経済インデックスファンドが根強い人気を維持していることから分かるのは、バランス型インデックスファンドにとって重要なのはコストだけでなく資産配分に関するコンセプトだということです。そのコンセプトに賛同でき、さらに自分が理想とするポートフォリオに近いなら、これ1本で運用するというのも十分にありでしょう。なにしろ手間暇がまったくかかりませんから、圧倒的に“ほったらかし”運用ができるのです。
そんなわけで私自身にとっても世界経済インデックスファンドは非常に気に入っているファンドです。現在はこのファンドをコアに、個別ファンドを組み合わせることで自分のポートフォリオを作っていますが、年をとれば老化で前頭葉の機能も低下するでしょうから、今よりもっと投資に頭を使うこともできなくなるはず。そこで保有するファンドはこれ1本に集約した上で取り崩すことを計画しています。
ただ、1点だけエクスキューズするなら、三井住友TAMはそろそろ世界経済インデックスファンドの信託報酬引き下げを検討してはいかがでしょう。実際に2012年には年0.6%から現行の0.5%に引き下げた実績があるのですから。販売会社もそれほど多くありませんから、やりようはありそうに感じます。それができれば、ますます人気は盤石なものになると思うのですが三井住友TAMさん、いかがでしょう。