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2016年10月17日

さわかみ投信の個人型確定拠出年金(iDeCo)の割り切った発想は潔いのだけれども・・・



2017年1月から個人型確定拠出年金(個人型DC、愛称:iDeCo)の加入対象者が拡大されることもあり、金融機関の競争も激しくなってきました。とくに面白いと感じるの、独立系直販投信が相次いでiDeCoへの商品提供を開始したことでしょう。セゾン投信が楽天証券のプランに、ひふみ投信のレオス・キャピタルワークスがSBI証券のプランにそれぞれ商品を提供することになりました。ところが、これらと一線を画する動きをしている独立系直販投信が、さわかみ投信です。他社のiDeCoに商品を供給するのではなく、さわかみ投信自体が運営管理機関としてiDeCoプランを立ち上げました。

さわかみ投信個人型確定拠出年金
個人型確定拠出年金(「個人型DC」) サービス開始のお知らせ(さわかみ投信)

しかも、いろいろな意味で「これはスゴイ」を思わずにはいられない中身です。なんと商品ラインアップが「さわかみファンド」を含めて3本しか用意されていない。ここまで割り切った発想のプランを用意するとは、これはこれで潔いです。

さわかみ投信は2014年から企業型DCの運営管理機関に参入してきた実績があります。それを生かして満を持してiDeCoにも参入したのでしょう。ただ、シンプルながらオーソドックスな国際分散投資が可能な商品ラインアップだった企業型DCと比べて、iDeCoの商品ラインアップは過激です。なんと、以下の3本しかありません(カッコ内は信託報酬〈税抜〉)。

スルガスーパー定期1年
さわかみファンド(1.0%)
DCダイワ物価連動国債ファンド(0.4%)

なぜこんな極端なラインアップになったのかという理由を、さわかみ投信は次のように説明しています。
豊富な運用商品はベテラン投資家にとっては喜ばしいことですが、投資に馴染みのない方にしてみれば「投資は自己責任です。この30 本のファンドの中から好きなように選んで下さい。」と言われても困ってしまうのが実情ではないでしょうか。
本来この制度は、その名の通り「年金」であり、個人投資家ではなく一般生活者のための制度であるはず。それならば、運用商品もそのような趣旨に合ったラインナップにすべきでしょう。
また、さわかみ投信の澤上龍社長と企画部確定拠出年金担当主査の廣瀬陽太氏がモーニングスターのインタビューに答え、同様のことを説明しています。

さわかみ投信のiDeCo、3つだけの運用商品でシンプルな「じぶん年金」を実現(モーニングスター)

ここでも廣瀬氏は次のように語っています。
大事なことは、投資知識がなければ資産形成ができないということではなく、将来のための備えは誰でも始められて、始めるのは若い方が良いということを広めることだ。そして、誰もが感じている将来への「漠然とした不安」を、iDeCoを始めることによってやわらげることができることを知ってほしい。そのことを伝える工夫をしていきたい。
ようするにiDeCoは投資のためのツールではなく、あくまで老後のための「年金」だということ。年金なのだから運用はプロに任せて、加入者はいちいち投資の勉強などする必要はないということです。なぜななら、投資をするためには投資家としての勉強が必要ですが、年金はそもそも投資の勉強なんかしたくないという一般生活者でも容易にアクセスできるものでなければならないという発想です。

この発想に基づき、商品ラインアップは「元本割れは絶対にイヤ」な人のための定期預金、「ある程度リスクをとってお金を増やしたい」という人のための株式アクティブファンド、「お金を増やすというより、物価の上昇に負けないようにしたい」という人のための物価連動国債ファンドの3本に商品ラインアップを絞った。確かに廣瀬氏が指摘するように「この3つのニーズは、どんな時代にも存在する。このニーズにしっかり応えられれば、これ以外に特に必要なものはない」というのは、資産運用に対するひとつの考え方としては十分にありえます。

これはこれでなかなか潔い発想です。そして、無下に批判するべきでもないでしょう。なぜなら、iDeCoはあくまで個人が自由に運営管理機関を選べるのだから。つまり、さわかみ投信のiDeCoプランの発想に疑問を感じる人は、さわかみ投信のiDeCoプランなど選択肢に入れなければ済むだけです。逆に、さわかみ投信の発想に賛同できる人が納得も得心もして加入すべきです。その意味で、さわかみ投信のプランは、“さわかみファンの、さわかみファンによる、さわかみファンのためのiDeCo”なのでしょう。それはそれで、やはり清々しいものがあります。

そんなわけで、さわかみ投信のiDeCoプランは、決して人に薦めることはできないけれども、そのユニークさは興味深いものがあります、はたして、どれだけ加入者が集まるのでしょうか。やはり、これも興味深いです。

ただ、一点だけ注意することがあるとすれば、さわかみ投信への信頼感の源泉がどこにあるのかということかもしれません。基本的にさわかみファンは、さわかみ投信の創業者である澤上篤人さんのファンでしょう。でも、iDeCoは長期投資が原則です。例えば30歳の人が加入すれば、運用は60歳までの30年間続くのです。そして、澤上篤人さんは来年70歳になります。だから、さわかみ投信のiDeCoに加入する人は、澤上篤人さんだけでなく、その後継者である澤上龍氏を信頼して自分の老後のための資金を託さないといけないのです。

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