2016年10月10日

インデックスファンドを使えばパキスタンのような国にも低コストで投資できる



私は新興国投資が大好きなのですが、それは実際に現地に足を運んでその国の経済の勢いといったものを実感した国に投資したいからということがあります。そのひとつが定期的に訪問しているインドネシアなのですが、もうひとつ、ぜひ投資したいと思っている国がありました。それがパキスタンです。パキスタンといえば対テロ戦争で治安も悪く、経済も混乱していたのですが、最近では随分と落ち着き、経済成長も著しいものがあります。なんとかパキスタンに低コストで投資する方法がないか考えていたのですが、うれしいことに今年6月にパキスタンがMSCI・エマージング・マーケット・インデックスに組み入れられることが決まりました。それから現在まで、パキスタンの株価は素晴らしいパフォーマンスを続けています。こういった国の株式にも低コストで投資できるのが、インデックスファンドの魅力だと改めて感じます。

私が初めてパキスタンを訪問したのは2013年でした。当時はムシャラフ政権が崩壊し、復権したシャリフ首相がIMFの管理下で経済の立て直しに全力を挙げていたころです。そんな時期に仕事でパキスタンのカラチを訪問し、現地の空気として経済の先行きに対して非常にポジティブな印象を持ちました。なにより人口動態が素晴らしいのです。国民の平均年齢は22歳、人口ピラミッドも綺麗な富士山型です。南西アジアの新興国といえばインドが最も注目されているわけですが、パキスタンも投資先としてはダークホースではないか思ったのです。

この予想はある程度は当たりました。ここ数年、パキスタンの経済成長率はV字回復しており、株価も素晴らしいパフォーマンスを見せています。ブルームバーグのサイトで調べてみると、パキスタンの株価指数であるカラチ全株指数の過去5年間の推移は次のようになっています。



こういうチャートを見ると、ぜひパキスタンに投資したくなります。しかし、パキスタンのような国に投資するのは簡単ではありませんでした。カントリーリスクが大きいのです。何しろ落ち着いたとはいえ、現在でも対テロ戦争の真っ最中なので治安は悪く、カラチの街も武装した警備員を同行させなければ移動することすらできません。実際、私がカラチを訪問したときも、街のいたるところに武装した兵士(下写真)が警備にあたっていましたし、勝手にホテルの外に出ることも禁止されていました。



そんなパキスタンですが、今後は誰でも容易に低コストで投資することができるようになります。今年6月にMSCIエマージング・マーケット・インデックスにパキスタンが新たに組み込まれることが決まり、17年5月から実際の組み入れが始まります。つまり来年から、MSCIエマージング・マーケット・インデックスに連動するインデックスファンドやETFを買えば、誰もが低コストでパキスタンの株式に投資できる。これは本当に素晴らしいことです。これぞインデックス投資の魅力のひとつでしょう。

指数入りの効果もあってか、6月以降のパキスタン株は一段と上昇しています。さらに8月にはIMFプログラムが無事に終了し、パキスタン経済は再び独り立ちしたことになります。やはり8月以降、株価の上昇もさらに加速しました。来年からは指数買いによる資金流入も予想できますので、さらなる株価上昇への期待が高まっています。

インデックス投資には様々な魅力がありますが、最大の魅力は何かと言えば、個人投資家レベルではとても投資できないような国々にも幅広く分散して投資できることではないでしょうか。新興国投資不要論や米国株至上主義も考え方として一理ありますが、実際はどの国にだって発展の可能性は秘められているはずです。実際に足を運んだこともない国や地域に対して「あの国、あの地域への投資は不要だ」と言いきってしまうのは傲慢というものでしょう。

世界は、私たちが想像している以上に広いのです。そして、個人投資家が認識できる範囲は想像以上に狭い。成長の種子は世界のどこにあるのかわからない。だからこそ、投資対象をできるだけ広くしておきたいのです。最近のパキスタン経済の好調と株価上昇を見て、世界に幅広く国際分散投資ができるインデックス投資の面白さを再確認することができたのです。
(写真は著者撮影)
【追記】
記事の内容に一部誤りがありましたので修正しました。ご指摘いただいたkenzさん、ありがとうございます。

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