2016年10月31日

投資家意識と資本家意識―海運3社のコンテナ船事業統合に想う


日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社が31日、合弁会社を設立して不振が続くコンテナ船事業を統合すると発表しました。世界的な海運不況を受けて、3社とも深刻な経営不振に陥ってるわけですが、その打開策としてついに競合の枠を超えて“オール・ジャパン”で世界のコンテナ船市場で戦う決心をしたということです。

海運3社:コンテナ船事業統合、世界6位へ-「歴史的転換点」(ブルームバーグ)

私は日本郵船の株式を保有していますが、今回のコンテナ船事業統合や、業績下方修正と無配転落について、いろいろと想うところがありました。ただ、その想いは投資家としての意識よりも資本家としての意識から生じるものでした。

今回のコンテナ船事業統合について日本郵船の株主としては大賛成です。そもそも海運業は世界的に統合が進んでおり、その中で日本勢だけが国内大手3社体制を維持する合理性がまったくないからです。その意味で、今回の事業統合によって“オール・ジャパン”で戦う体制ができたことは喜ばしい。

ただ、私自身の個別株ポートフォリオは依然として大きな打撃を受けています。日本郵船の株式を保有して以来、大きな含み損を抱えていますが、ついには無配転落してしまいました。アク抜けの感じもあって株価は若干上昇しましたが、やはり大きな含み損状態にあることに変わりはありません。

こうした銘柄について投資家としてどのように考えるべきでしょうか。資産効率という面では、一時的に損切りするのも一つの判断でしょう。ただ、私はどうしても日本郵船を損切りする気になれません。それは、日本郵船という会社が、ひどく気に入っているからです。

そもそも海運業というのは、日本にとって特殊な歴史的意義を持つ産業です。日本は島国であるという地政学的条件から、どんなことがあっても維持しなけらば産業です。だから、坂本龍馬のときから、海運業の振興は日本国発展の基盤だと位置付けられてきたのです(ちなみに、日本郵船の前身は坂本龍馬の海援隊です)。

そう考えると、日本郵船に株主として、今この会社を見捨てることはできない。歴史的苦境の中で弱小株主といえども、応援しなければならないという思いが強くなりました。だから、もう一段の株価の下げがあれば、それこそ本当に“応援買い”として新たな資金を投じるつもりでいます。

よく「投資では保有銘柄に惚れてはいけない」と言われます。それは投資家意識としては正しい。しかし、個別銘柄を保有するということは、資本家として直接的にその企業を所有することです。自分の所有物は、とことんまで愛すべきではないか。それが資本家意識というものです。

個別銘柄を長期保有すると、通常の投資とは異なる感覚が生じる場合があります。それは「投資家意識」から「資本家意識」への変容とでもいえるものです。そこでは、“儲ける”ということの優先順位が下がるケースも少なくありません。それは多分、私が株式投資の社会的意義について考えすぎているからかもしれませんが、それはそれで清々しい感覚なのです。
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