ひふみ投信の8月次運用報告書が出ました。2016年9月の運用成績は騰落率が+4.9%、参考指数であるTOPIX(配当込み)の騰落率は+0.3%でしたから、9月は指数を大きくアウトパフォームしました。また、9月30日で第8期(2015年10月1日~2016年9月30日)は決算となります。ひふみ投信の第8期の騰落率は+7.2%。TOPIX(配当込み)の騰落率は-4.2%ですから、インデックスをはるかに凌駕する素晴らしいパフォーマンスだったことになります。第8期は参考指数の騰落率がマイナスになるなど極めて厳しい相場環境でしたが、そこでこの成績とは恐れ入りました。まさに「守りながらふやす運用」を実現してくれました。本当に脱帽です。やはりインデックスを上回るアクティブファンドは確実に存在するということを今期も証明したわけです。なお、9月30日段階での純資産残高は331.4億円(前月は311.7億円)、受益権総口数は10,019,267,515口(前月は9,886,224,211口)となりました。あいかわらず受益者の信頼が厚く、安定した資金流入が続いています。しかし、これだけ素晴らしいパフォーマンスを見せつけられると、資金が流入するのもむべなるかなです。
年間の運用成績の詳細については11月頃に出る運用報告書を待つとして、9月単月でも素晴らしい成績です。7月、8月は日銀によるETF購入で大型株主導の相場となり、中小型株を得意とするひふみ投信は苦戦したわけですが、9月にきっちりと取り戻した形になります。この点に関して最高運用責任者の藤野英人さんは次のように指摘しています。
昨年から続いていた日本の弱気相場が転換点に来た可能性があると判断し、外部環境の影響を受けにくい、いわゆる「ディフェンシブ(防御的な)」企業を中心とした銘柄構成から、より株価の先高観を意識した銘柄構成へと変化させ始めています。具体的には、新興国の緩やかな回復やグローバルな財政出動によるインフラ投資の回復を見込んで、小松製作所(6301)や三菱商事(8058)など大型株の比率を上昇させる一方で、利益が出ている小型内需株を一部売却し、3カ月ぶりにTOPIX(東証株価指数)を上回る成績を上げることができました。受益者の一人として、お見事としか言いようがありません。7月、8月は日銀の指数買いの影響で苦戦していたところ、素早くポートフォリオの中身を入れ替えることで、今度は日銀の指数買いを逆手にとって指数を上回るリターンを得たわけです。こういう職人芸的な運用を見せられると、やはり受益者としての喜びもひとしおです。しかも、単に日銀の政策に追随するだけでなく、中長期的な市場環境の変化を分析した上での銘柄入れ替えですから、これもまた職人芸的で感心します。
月次運用報告書に先立って発表された中間レポート恒例の組入れ銘柄紹介は、薬王堂(3385)でした。岩手県を中心に東北5県(青森、秋田、岩手、宮城、山形)を出店エリアとしてドラックストアをチェーン展開している企業です。関西在住の私などからすればまったく馴染みのない会社ですが、東北地方の人にとってはお馴染みなのかしら。東北地方は人口減少や高齢化で既存の商店街が廃れ、薬王堂のような「小商圏バラエティ型コンビニエンス・ドラッグストア」が支持されるというのが組入れに際してのストーリーのようです。こういう銘柄も個人投資家が自力で発見するのは至難の技ですから、やはりアクティブファンドを活用するメリットだといえるでしょう。地方の小商圏が持つ地力を評価する藤野さんの嗜好がよく出ている銘柄かもしれません。なお、この点に関しては藤野さんの著書、『ヤンキーの虎』が興味深いです。
10月から第9期がスタートしたわけですが、今後も米国の利上げや大統領選挙、ドイツ銀行問題など相場の波乱要素は次々と登場しています。引き続き厳しい相場環境が予想される中で、ひふみ投信がどのように乗り切っていくのか。そこで、どのような運用の妙技を見せてくれるのかを受益者として楽しみにしています。「守りながらふやす運用」というのは、極めて難易度が高いものですが、あくまでそれに挑戦し続けるひふみ投信を応援したいと思います。
【ご参考】
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