楽天証券の個人型確定拠出年金プラン(個人型DC、愛称:iDeCo)が話題になっていましたが、予想通りSBI証券が逆襲に出ました。なんと運営管理手数料のみならず新規加入・移換手数料まで無料とするキャンペーンを実施します。また、商品ラインアップに「ひふみ投信」のDC専用ファンドである「ひふみ年金」、そして超低コストインデックスファンドである三井住友・DC日本株式インデックスファンドSと三井住友・DC外国リートインデックスファンドなど4ファンドを追加します。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の大幅サービス拡充のお知らせ~SBI証券は個人投資家の皆さまのiDeCoでの資産形成を応援します!!~(SBI証券)
楽天証券のiDeCo参入と商品ラインアップが発表されてから、最もお得なiDeCoプランは楽天証券が最有力となっていたのですが、今回のSBI証券によるキャンペーンとラインアップ追加で両社は完全に並んだといえます。2017年1月から加入資格者が大幅に拡大するiDeCoですが、先行者利益を確保しようとするSBI証券の本気度が伝わってきます。
SBI証券のiDeCoは、従来から口座残高50万円以上で運営管理手数料が無料になるなど圧倒的なコスト競争力を持っていました。しかし、楽天証券が資産残高10万円以上で運営管理手数料を無料とする手数料体系を打ち出し、さらに2017年12月まで残高10万円未満でも運営管理手数料を無料とするキャンペーンを打ち出したことで、SBI証券はやや後れを取りました。
ところが今回、SBI証券は2016年9月23日から2017年3月31日までに新規加入もしくは他の金融機関から移換した契約者に対して資産残高にかかわらずキャンペーン期間中は運営管理手数料を一律無料とするキャンペーンを打ち出しました。
なにがスゴイのかと言うと、運営管理手数料だけでなく新規加入手数料と移換手数料まで無料になる点です。この狙いは明らかで、来年1月から新たにiDeCoの加入対象となる人だけでなく、すでに他の金融機関のiDeCoに加入している人の移換需要も総取りしてしまおうということでしょう。すでに他の金融機関のiDeCoプランに加入している人が移換を検討する場合、非常に助かります。SBI証券の思い切った施策に、正直驚きました。
商品ラインアップの弱点がなくなった
また、10月14日から新たに以下の4ファンドが商品ラインアップに追加されます。
これも驚きの展開です。SBI証券のiDeCoは各資産カテゴリーに低コストなインデックスファンドをそろえていましたが、唯一の弱点が日本株式ファンドでした。TOPIXに連動するインデックスファンドにコストが割高な「MHAM TOPIXオープン」(信託報酬0.702%)しかなく、次善策として日経平均連動の「ニッセイ日経225インデックスファンド」(0.27%)かTOPIX100に連動する「SBI TOPIX100・インデックスファンド゙
ところが今回、極めて低コストでTOPIXに投資できる三井住友・DC日本株式インデックスファンドSがラインアップされたことで、オーソドックスに日本株式はTOPIXに投資したいと考えている人にとって最適な選択肢が用意されたことになります。
また、海外REITファンドも、ETFにファンズ・オブ・ファンドで投資する「EXE-iグローバルREITファンド」(0.3624%程度)がありましたが、通常のインデックスファンドは「野村世界REITインデックスファンド(確定拠出年金向け)」(0.5724%以内)しかなく、やはりDC専用ファンドとしては割安感がないことから投資妙味が薄かった。しかし、ここに三井住友・DC外国リートインデックスファンドが加わったことで、オーソドックスなインデックスファンドで海外REITに投資したい人にとって朗報です。
インデックスファンドを使った海外分散投資を行う場合、SBI証券の商品ラインアップはコスト面でもまったく死角がなくなったわけです。
ポートフォリオの味付けに最適なアクティブファンドも用意
ポートフォリオの味付けとして、個性的なインデックスファンドやアクティブファンドを組み込むというのも面白いやり方です。そういったひと工夫したポートフォリオを組みたい人にとって注目は、「ひふみ年金」がラインアップに加わったことでしょう。
しかも「ひふみ年金」は、直販の「ひふみ投信」や証券会社・銀行ルートで販売する「ひふみプラス」よりも信託報酬が低く抑えられています。これは、ひふみ投信に長期保有者に対する口数還元制度が、ひふみプラスは資産残高の増加に応じて信託報酬が低下する仕組みが導入されているのに対して、ひふみ年金は最初から信託報酬を抑えることで直販や一般販売のファンドとDC専用ファンドの受益者の負担のバランスを取ったということでしょう。
ひふみ年金と同じマザーファンドで運用するひふみ投信は、運用責任者である藤野英人氏の個性と合わせて非常に人気があります。マザーファンドの過去の運用成績も参考指数(TOPIX配当込み)を大きくアウトパフォームしています。どちらかというと中小型株への投資を得意とするファンドですから、どうしても大型株中心の運用になってしまうインデックスファンドと組み合わせることで分散の高度化も狙えるでしょう。なかなか人気が出そうです。
今回の手数料無料キャンペーンと商品ラインアップ拡充で、SBI証券のiDeCoプランは再び楽天証券のプランと並んで最有力の選択肢になったと断言します。とくに移換手数料が無料になることから、すでに他の金融機関のプランでiDeCoに拠出している人が、より低コストな運用を目的に移換する場合、SBI証券のプランは現段階でもっともお得な選択肢となるでしょう。
このほか、iDeCo専用サイトもリニューアルされました。とにかくiDeCoに対してSBI証券が本気であるということをひしひしと感じます。iDeCoは原則60歳まで換金できませんから極めて長期の運用となります。長い付き合いとなるからこそ、iDeCoに対して本気で取り組んでいる金融機関を選ぶというのも大切な観点です。その点でもSBI証券の姿勢は高く評価すべきといえるでしょう。また、他の金融機関が今回のSBI証券の動きにどう対抗するのかも気になるところ。今後の展開がますます楽しみになってきました。
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【ご参考】
iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券、楽天証券、マネックス証券、イオン銀行、松井証券です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランも研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン、楽天証券確定拠出年金プラン、イオン銀行確定拠出年金プラン、マネックス証券確定拠出年金プラン、松井証券確定拠出年金プラン