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2016年9月7日

日銀のETF購入枠拡大に翻弄される―ひふみ投信の2016年8月の運用成績



ひふみ投信の8月次運用報告書が出ました。2016年8月の運用成績は騰落率が-4.3%、参考指数であるTOPIX(配当込み)の騰落率は+0.5%でしたから、8月は指数を大きくアンダーパフォームしました。8月31日段階での純資産残高は311.7億円(前月は320.1億円)、受益権総口数は9,886,224,211口(前月は9,717,098,915口)となりました。純資産残高は保有資産の下落に伴い減少していますが、総受益権口数が増えていますので、8月も安定的な資金流入があったいえます。参考指数との比較で、ここ最近では最悪に近い運用成績となったわけですが、ひふみ投信ではその要因の一つとして、日銀による大規模なETF購入枠拡大があると見ています。

8月は典型的な夏枯れ相場で、日本の株式市場も売買高が低調な日が多かったのですが、やはり7月に発表された日銀によるETF購入枠拡大(年間6兆円)は、株価の下支えとなりました。とくにETFのポートフォリオを構成する日経平均やTOPIX、JPX日経400などインデックスに組み込まれている銘柄が思惑買いも含めて大きく値を上げた印象があります。

こうした動きに、ひふみ投信が翻弄されてしまったようです。運用責任者である藤野英人さんは、次のようにパフォーマンス低迷の要因を分析しています。
増額で倍増した日銀の年間約6兆円のETF(日本株)購入枠は良い面・悪い面の両面があります。良い面は、株式市場に上昇モメンタムを与え、円高で失速気味だった株式市場や景気の底割れを防いだこと。悪い面は、会社の業績の良し悪しなどに関 わらず、大型株中心に市場全体を買い上げることで株式市場の規律が失われつつあることです。そのためひふみが投資するような成長企業への投資には逆風となります。これが今月の運用成績が奮わない理由の1つ目です。

もうひつの理由が、世界的に「最少分散戦略」に基づいて買われていた銘柄が、ここにきて売られ始めたことがあります。世界的な低金利から、価格変動の少ない株式銘柄に代替的に投資する動きがあったのですが、米国の利上げが視野に入ってきたことで、こうした最小分散投資戦略から資金が流出しているようです。これもひふみ投信の運用に影響を及ぼした可能性があるとして、次のように指摘しています。
「最小分散投資」戦略では、景気変動に左右されにくい医薬品や食品 などの企業が多く、ひふみに組み入れられている企業と重なる部分もあります。また年初からの米ドル安円高の影響により、7月末時点での対米ドル換算での日本株、特に成長株の株価は米国株を上回っていました。好調だった日本の「最小分散投資」銘柄や成長株は売却の対象となったと見られ、これがひふみに悪い結果をもたらした理由の2つ目と言えます。

このように、ひふみ投信のような中小型株や成長株への投資を得意とするアクティブファンドにとっては厳しい地合いだったということです。ただ、こういった地合いの変化は誰もが予想できることですから、それに合わせたポートフォリオの組み換えを行ってもよかったわけです。しかし、ひふみ投信はそれをやらなかった。あいかわらず「外部環境に依存せず成長出来る」と分析した企業を選択し、投資を続けている。インデックスとはまったく異なるポートフォリオで勝負するのがアクティブファンドの醍醐味のひとつですから、これはこれで頼もしい面もあります。指数買いが主導する相場は“市場の歪み”も大きくなってくるはずですから、ひふみ投信のようなアクティブファンドにはチャンスでもあるわけです。その意味では、かえって今後に期待が持てる展開なのかもしれません。

さて、月次運用報告書に先立って発表された中間レポート恒例の組入れ銘柄紹介です。今回はLITALICO(6187)です。これは、まったく知らない会社でした。障がい者への就労支援サービスや、学ぶことに困難がある子ども向けの幼児教室・学習塾を展開している会社だとか。業績も堅調に伸びているようですが、なんとなくひふみ投信が持つ投資に対する倫理観みたいなものも感じさせる銘柄選択です。ひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークスというのは、意外と"きれいごと"にこだわる運用会社であり、それがまたひふみ投信の魅力でもあるのです。

【ご参考】
ひふみ投信は、銀行や証券会社といった販売会社を通さない直販ファンドです。ネットから無料で口座を開設することができます。⇒ひふみ投信

ひふみ投信と同じマザーファンドに投資する「ひふみプラス」はSBI証券 、カブドットコム証券、楽天証券、マネックス証券など主要ネット証券や地方銀行などで買うことができます。

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