2016年9月8日

セゾン投信が楽天証券の個人型確定拠出年金にラインアップ―問われる“信託報酬の合理性”



セゾン投信が個人型確定拠出年金に参入します。9月末からサービス開始を予定している楽天証券の個人型確定拠出年金(個人型DC)の商品ラインアップにセゾン投信のセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドセゾン資産形成の達人ファンドが加わるとのことです。

セゾン投信 個人型DCへ参入 ~商品提供開始のお知らせ~(セゾン投信)
セゾン投信、個人型の確定拠出年金参入 楽天証券と(「日本経済新聞」電子版)
楽天証券が個人型DCでセゾン投信と組む理由(東洋経済ONLINE)

これまで直販にこだわり続けたセゾン投信としては大きな決断です。セゾン投信の2ファンドは、いずれも良心的なファンドとして実績があり、直販ならではのきめ細やかな情報発信や受益者に対するフォローの素晴らしさから根強い人気があります。これが個人型DCでも買えるとなると、楽天証券の個人型DCプランに興味を持つ人は少なくないのでは。来年1月から加入対象者が拡大されることで競争激化が予想される個人型DCの分野でセゾン投信と楽天証券がどういった切り口を打ち出してくるのか注目です。

セゾン投信が商品を提供する楽天証券の個人型DCプランはは残高20万円以上で運営管理手数料が無料になるなど極めて優れたサービスを打ち出しており、あとは商品ラインアップがどうなるかに注目が集まっていました。今回、そのひとつがセゾン投信の2ファンドということになりました。セゾン投信の中野晴啓社長も東洋経済の記事の中で次のように述べています。
徹底した長期投資と低コスト主義で個人の人気を集めてきたセゾン投信からすれば、「個人型DCの運営管理機関の中で、口座管理手数料を最安値水準に設定してきた楽天証券は、パートナーとして相応しいと判断した」(中野晴啓セゾン投信社長)。
セゾン投信としても、かなりの意気込みで個人型DCに参入しようとしていることがよく分かります。なにしろDCは60歳まで換金できませんから、考えようによってはセゾン投信が目指す「長期投資」のための最適なプラットフォームともいえるからです。

一方、課題もあるでしょう。DC用のファンドは一般販売されるファンドよりも低廉な信託報酬が設定されるところに妙味があるのですが、セゾン投信が提供するセゾン・バンガード・グローバルバランスバランスファンド(信託報酬:0.69%±0.03%)とセゾン投資の達人ファンド(信託報酬:1.35%±0.2%)は、ともに一般販売と同じ信託報酬となる模様。そうなるとDC用ファンドとしては、やや割高感のあるコスト体系です。はたして、これをどうやってDC加入者に訴求していくのでしょうか。

この問題に関してセゾン投信の中野社長の考えをうかがい知る文章がセゾン投信の受益者向けレターにありました。

中野晴啓「DC制度における長期投資普及の課題」(「セゾン投信NEWS LETTER」2016年9月号)

なかなか大胆で率直な意見が述べられています。中野社長が指摘するように、そもそもDC用ファンドは確定給付型企業年金(DB)からの移換を主な当初目的として設定されたため、大口投資家向けの報酬水準が個人向けにそのまま引き継がれたケースが多い。このため金融機関にとって収益性が極めて悪く「結果として金融機関にとって営業上無視すべき対象に成り下がってしまった」と指摘します。その一方で一般販売される投資信託は高コスト化が進み、不合理な「一物二価」の状態が生まれていることを批判しています。

こうした問題をクリアするためには、フィデューシャリーデューティーの観点からも信託報酬の合理性が厳しく問われるし、それこそが長期投資を可能にする前提であるというのが中野社長の主張です。これは中野社長が最近よく指摘することですが、コストの多寡が問題なのではなく、その「合理性」が重要なのだという考え方です。

こうした考え方を踏まえると、セゾン投信が一般販売もDC用も同じ報酬体系で商品を提供するということには論理的一貫性があります。あとはDC加入者に、セゾン投信の商品の報酬体系が、いかに”合理的”だと納得も得心もしてもらえるような付加価値を提供できるかが重要になるはずです。一般販売以上に信託報酬の合理性が問われるのではないでしょうか。

その意味で、やはり東洋経済の記事にある次の記述が大きな意味を持つのでしょう。
今後、楽天証券とセゾン投信は、個人型DCを普及させていくにあたり、商品提供だけでなく、加入者に対する継続的な投資教育も含めて、幅広い協力関係を築いていく方針を打ち出している。
はたしてセゾン投信と楽天証券が加入者に対してどのような付加価値を提供する計画なのか非常に興味があります。

投資の普及という側面から考えると、こうしたサービス面での付加価値を巡る競争もコスト競争と同じくらい重要性を持つようになるのかもしれません。今回のセゾン投信によるDC参入は、投資信託の商品力を巡る競争がもう一段高いレベルで考えられるようになるきっかけになるかもしれません。その点でも大いに注目すべきでしょう。

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