2016年9月2日

新興国の経済成長の果実は誰が取り込むのか



先月は1週間ほど仕事でインドネシアに出張でした。低調だったインドネシア経済も、ここにきてようやく底入れの気配でした。東南アジアなど新興国の株式に投資している立場からすると、ちょっと安心したというところでしょうか。ところで新興国投資についてはいろいろな見方があり、“新興国投資不要論”も存在します。その理由としてよく指摘されるのが、新興国投資はリスクの割にリターンがともなっていないこと、そして新興国が成長するとしても、その成長の果実は先進国の企業が取り込むのだから、先進国企業に投資するだけで十分というものです。それはそれでひとつの見識だと思います。ただ、実際に新興国に定期的に足を運んでいると、そうも単純に思えなくなるのも事実。はたして新興国の経済成長の果実は誰が取り込むのでしょうか。インドネシアを例に少し考えてみようと思います。

ジャカルタの街には欧米のファーストフードチェーンやカフェチェーンがたくさんあり、どこもとても人気があります。私がよく行くビルの1階にはスターバックスとバーガーキングがあり、やはりよく行くのですが、最近になって両社とも運営しているのは同じ現地企業だということを知りました。ライセンス契約に基づいてスターバックスやバーガーキングの看板を掲げている。なるほど、同じビルに並んで両店舗があるわけだ。ちなみにこの現地企業は、ほかにも欧米のアパレルブランドなど多数とライセンス契約を結び、インドネシアで非常に儲けているとか。

インドネシアのような新興国は与信管理や資金回収のリスクが大きいので、グローバル企業といえども簡単に独資では進出が難しいし、現地の法律で外資の進出に制限が加えられているケースも少なくありません。だから、どうしても現地企業と組んで事業運営しなければならないわけです。これが新興国でのビジネスの実態です。

こうした現実をどのように解釈するべきでしょうか。ある意味では、先進国のグローバル企業はライセンス料を徴収することでノーリスクで新興国の経済成長の恩恵を受けることができるといえます。しかし逆に、いくら現地でのビジネスが成功しても、先進国のグローバル企業はライセンス料の部分しか、成長の果実を取り込むことができないともいえるのです。

こうした状況は、日本でもかつてあったことです。例えば日本マクドナルド、セブン-イレブンと契約したイトーヨーカ堂(現 セブン&アイホールディングス)、ヤマザキナビスコを傘下に持つ山崎製パンなどなど。これら日本企業は欧米など先進国企業とライセンス契約することで、かつて新興国だった日本の経済成長と同伴する形で大いに発展し、株価も素晴らしいパフォーマンスを記録しました。こうした状況は、はたして成長の果実を先進国に取り込まれたといえるのでしょうか。

同じようなことが現在の新興国で起こる可能性が無いとは言えないはずです。そもそも外国資本が他国の経済成長の果実をすべて取り込むことなど、どだい不可能なことに思えてなりません。新興国の経済成長は、程度の差こそあれ現地の企業の成長につながるはずです。

こういったことを考えると、長期の国際分散投資において安易に“新興国投資不要論”を唱える気にはならない。やはり新興国企業の成長の可能性を期待して、ポートフォリオには新興国株式を組み込んでおきたいと思うのです。そして、そういった感覚は実際に新興国に足を運ぶたびに実感として強くなっています。

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