2016年9月20日

労働組合幹部は3級FP技能士程度の知識を持たなければならない



来年1月から個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入資格者が拡大されることで金融機関の競争が激しくなってきました。楽天証券の参入に続いて、損保系でも損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントが低額の手数料でiDeCoに参入するとか。東京海上日動火災保険も運営管理手数料の値下げを検討しているそうです。

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こういう健全な競争によるコスト引き下げが起こることは消費者としてありがたいことです。一方、ここにきて気になることも。企業型DCのコストが高止まりしているのではないかという問題です。企業型DCは加入者以外には実態もよく分からないので、あまり話題にならないのですが、Twitterなどでやり取りしている人からの情報によると、商品ラインアップなどにかなり問題があるプランも少なくなさそうです(とくに地銀と損保のプランの評判が悪い)。個人型DCなら加入者は自由に金融機関を選ぶことができますが、企業型DCはそういうわけにはいきません。こういう問題に対してどのように対処すればいいのでしょうか。この点に関して私は、DCプラン導入の意思決定に参画する労働組合(組合が無い企業の場合は従業員代表)の責任が重いと考えます。だから、労組幹部は一定の金融リテラシーを持たなければななりません。最低でも3級FP技能士程度の知識を持つべきなのです。

サラリーマンの場合、就職した会社が企業型DCを導入していると無条件でそのプランに加入しなければならないわけですが、プランの商品ラインアップが貧弱だと余計なコストを負担することになり悲劇です。

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なぜこんな馬鹿げたことが起こるのかというと、中小企業の場合は基本的に企業の制度担当者に基本的な知識がないことが理由でしょう。うがった見方をすればDCプランを提供する地銀などが融資業務を通じて得た優越的地位を濫用しているとさえ見えます。ただ、従業員サイドにまったく責任がないのかと言えば、そうでもありません。

そもそも企業型DCは導入に際して事業主は労使合意の下で規約を作成し、厚生労働大臣の承認を受けなければなりません。だから、本来ならどの金融機関のプランを採用するかに対しても労働組合がきちんと意見を言わなければならない。その意味で、企業型DCがボッタクリのプランのまま放置されている責任の一端は労働組合にもあるわけです。本来ならDCプランの改善も労働組合を通じて求めるべきでしょう。

ただ、悲しいかな労働組合の幹部は総じて企業側の人間以上に金融リテラシーが低い。とくに中小企業の単組レベルになると、DCどころか社会保険全般に対する知識すら怪しい。私は勤務先の労働組合で委員長をしましたし、現在でも執行委員を務めています。上部団体である地域の産別労組連合団体の代表幹事もしていますが、はっきりいって社会保障における自助努力に関する話題をしても、まったく話が通じません。

そのくせ「反アベ」とか「戦争法案反対」でデモをしたり署名活動をしたりすることには熱心なわけです。私は労働運動の一要素として政治活動の重要性を認識しているので、そういった活動にことさら反対しませんが、経済闘争の重要性を軽視するやり方には反対します。政治の勉強も大事だけれども、それと同等に経済、とくに社会保障関連の勉強は大事なはずです。だから、DC制度といった社会保障における自助努力に関する知識を労働組合は持つべきなのです。

そういうことを組合活動でもことあるごとに発言してきましたが、ついには他労組の幹部から「あそこの委員長は銭ゲバだからな」といった陰口まで叩かれました。しかし、銭ゲバで大いに結構。私の運動方針は、つねに経済闘争最優先主義ですから。

愚痴っぽくなってしまいましたが、なにが言いたいのかというと、DCの普及のように社会保障における自助努力のウエートが高くなればなるほど、労働者は経済や金融に関するリテラシーを磨かなければならないということです。そうしないと、資本家にますます搾取されてしまう。ボッタクリの企業型DCプランというのは、その典型なのです。

そして、労働者個々がバラバラに勉強するのは効率が悪いし、現実的でもありません。労働者は団結してこそ力を発揮できるのですから、労働組合の役割がますます大きくなる。だから労働組合の幹部こそ、それこそ3級FP技能士程度の知識を持たなければならないのです。そして、組合員に情報を発信するべきなのです。

私は現在、若い組合員に対して少しづつDC制度などについてレクチャーしています。私の勤務先は企業年金がないのでiDeCoに加入することができるからです。中小企業のサラリーマンは経済基盤が不安定だからこそ、自己防衛の武器として経済・金融リテラシーは欠かせない。ほとんど蟷螂の斧を振るがごときささやかな運動ですが、それでも資産形成に関心を持ってくれる若い組合員が出てきました。DC制度の普及をきっかけに、労働組合でも意識を変革するべきだし、そうなって欲しいと強く思うのです。
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