2016年6月7日

SBI-PIMCOジャパン・ベターインカム・ファンドが登場―低コストは評価できるが社債投資への理解が必要



以前にブログで紹介したSBIホールディングスとPIMCOによる合弁債券運用会社、SBIボンド・インベストメント・マネジメントが公募投資信託の第1弾としてSBI-PIMCOジャパン・ベターインカム・ファンド(愛称:ベタイン)を組成しました(有価証券届出書はこちら)。6月7日からSBI証券で募集が始まるそうです。日本企業の外貨建て社債に為替ヘッジ付で投資するファンド・オブ・ファンズ(FoF)方式のアクティブファンドですが、購入手数料なし(ノーロード)で信託報酬も年0.572%と比較的抑えられています。なかなかユニークなファンドだと思いますし、低コストな点も評価できます。ただ、購入を検討する場合は、社債投資に関する理解も必要でしょう。

ベタインは、格付けA格以上を持つ日本企業のドル建て社債に投資するFoF方式のアクティブファンドです。現在、日銀による金融緩和とマイナス金利で日本の公社債は歴史的な低利回りとなり、なかなか投資妙味を見出しにくい。そこで利回りの高いドル建て社債に為替ヘッジ付で投資することで為替リスクを抑えながら円建て社債を上回る利回りを確保しようという戦略です。為替ヘッジコストがかかりますが、それを差し引いても円建て社債に投資するよりも高い利回りが狙えるという考えなわけです。これは比較的オーソドックスな投資戦略なので十分にありでしょう。

コスト面も良心的です。FoF方式なのでファンドの信託報酬年0.243%(税抜:年0.225%)に投資対象ファンドの信託報酬年0.329%が必要になりますが、それでも実質コストは0.572%。通常の円建て社債に投資するアクティブファンドの信託報酬と比べると、例えばニッセイアセットマネジメントのニッセイ日本インカムオープン(愛称:Jボンド)の信託報酬が「新発10年固定利付国債の利回り(終値)に応じて、その上限率は年0.9180%(税抜0.85%)、また下限率は0.1566%(税抜0.145%)」となっていますから、ベタインが画期的に安いとは言えません。しかし、ベタインと同じような外貨建て日本社債に投資するアクティブファンドと比較すると、例えば三井住友アセットマネジメントの日系企業海外債券オープン(為替ヘッジあり)が信託報酬年0.935%(税抜)、東京海上アセットマネジメントの東京海上Roggeニッポン海外債券ファンド(為替ヘッジあり)が年0.82%(税抜)、追加型ではなく単位型投信ですが大和証券投資信託委託の外貨建てニッポン社債ファンド(為替ヘッジあり)2016-03(愛称:日本のめぐみ16-03)が年1.275%(税抜)ですから、ベタインは相対的になかなか低コストだと評価できます。

社債投資のリスクを理解している人しか買ってはいけない


ここまで見てみると、なかなか良い商品のように思えるかもしれませんが、注意するべき点も多いです。それは、社債投資というのは国債への投資と比べて圧倒的にリスクが高いということ。国債というのは、よほどのことがないとデフォルトしたり発行体が破綻することはありません。一方、社債はときたまデフォルトが起こるし、発行体の破綻も珍しいことではありません。利回りを追求するためにポートフォリオに転換社債や劣後債が含まれることも多い。こういった債権順位が低い債券は、いくら発行体の格付けが高くても、それなりに債券価格暴落のリスクがあります。

債券は債券価格が下落してもデフォルトさえしなければ満期まで保有することで元本と金利が保証されるのですが、ファンドで保有する場合は債券価格暴落や格付け低下でファンドの保有ルールから脱落すると損切りされてしまう可能性もあります。例えばDIAMアセットマネジメントのDLIBJ公社債オープン(短期コース)は信託報酬も安くて良心的な社債ファンドですが、保有していたシャープの転換社債の暴落と損切りで基準価額が大きく下落したことがありました。もっと古い話では、マイカルが破綻したときにマイカルの社債を保有していたファンドや個人は、けっこう寂しい思いをしたことも有名です。

だから、いくら国債を中心に組み込んだ国内債券インデックスファンドなどの利回りに投資妙味が薄いとしても、その代替として社債ファンドを考えるのは止めた方がいい。リスクのレベルがまったく異なるからです。また、いくら為替ヘッジ付でも外貨建て社債が低リスクで円建て社債を上回る利回りを確保できるか分からないことも認識しておく必要があります。為替ヘッジコストは対象通貨間の短期金利差から決定されますが、米国の利上げなどで日米の短期金利差が拡大すると為替ヘッジコストも跳ね上がり、ドル建て社債の利回りが高くても為替ヘッジコストを差し引くと円建て社債の利回りとあまり変わらなくなるケースも出てきます。そうなると信託報酬が高い分だけ外貨建て社債ファンドの方が最終リターンで劣後する可能性もあるのです。

そんなわけで、社債投資や為替ヘッジについてよく理解している人しか買ってはいけないファンドともいえます。また、新規設定のファンドに飛びついてはいけないということも強調しておきたい。ある程度、運用実績を確認できるようになってから購入を検討するべきです。そういうことをよく理解しているなら、株式ほどリスクはとりたくないけれども普通の国内債券ファンドでは物足りないという人にとって面白いファンドになるかもしれません(もっとも、個人的にはもう少し金利が上昇してからの方が債券への投資妙味が出てくると思いますので、いま買おうとは思えませんが)。

それよりも、同様の投資戦略をとるアクティブ運用の既存債券ファンドと比較してコストが大きく引き下げられていることは評価するべきです。これは何度も書いてきましたが、アクティブファンドこそ低コストが大切。とくに債券投資は期待リターンが大きくありませんので、高コストなファンドは間違いなく自滅します。そういう意味では、債券投資のアクティブファンドでも低コスト化の流れを作ろうとしているSBIホールディングスとPIMCOの取り組みというのは、商品の良し悪しとはまた別に評価するべきといえるでしょう。

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【ご参考】
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