世界最大の資産運用会社である米ブラックロックのローレンス・フィンクCEOがドイツ銀行のミーティングで、インデックスファンドやETFといったパッシブ運用への資金シフトが一段と進み、大規模な業界再編にまでつながるとの予想を披露しています。
資産運用業界は再編へ、パッシブ優位に-ブラックロックのフィンク氏(ブルームバーグ)
理由は単純明快で「アルファ(ベンチマークを上回る運用成果)を生み出すのに苦戦する資産運用会社があまりに多い」からとか。また、受益者保護の規制強化もアクティブ運用にとって逆風になっているようです。ますますアクティブ運用は行き詰りつつあるという印象を受けました。ただ、それって良いことなのかな?とも思ってしまいます。
アクティブ運用が、なかなかパッシブ運用にリターンで勝てないの世界共通の傾向であり、アメリカといえども例外ではありません。あまりにインデックスを上回れないファンドが多いため、幻滅した投資家がアクティブ運用のファンドから急速に資金を引き上げているそうです。
投資家がアクティブ運用のリターン低下に幻滅し、株式ファンドからは過去1年間で約1930億ドル(約21兆3400億円)の資金が流出。こうした資金はインデックスファンドに振り向けられている。この逆風に見舞われ、運用報酬が高い資産運用会社の中でも特にヘッジファンドが大きな打撃を受けている。21兆円というのはすごい金額です。そして、とくに打撃を受けているのがヘッジファンドだというのが象徴的。ようするにコストが高すぎるのです。コストが高いくせに運用成績が振るわないのでは、だれだって資金を引き上げます。そんなわけで、いまやヘッジファンドは「崩壊」寸前にまで追い込まれているとか。
ヘッジファンドを待つ審判の日、資産25%失う恐れ-ブラックストーン(ブルームバーク)
ローブ氏のサード・ポイント、ヘッジファンド業界は「壊滅的」局面(同)
なぜ、こんな情けない状態になってしまうのでしょうか。アクティブ運用が悪いからではないと思う。市場には確かにアルファがあるはずです。ただ、そのアルファは人が考えている以上に小さいのだと思う。そこでヘッジファンドのように高い運用報酬を取ると、アルファどころかベータまで毀損してしまう。ようするに自滅しているということです。だから、アクティブ運用ほど、コストを抑えることが重要になるのでしょう。
なかなかアルファを獲得できるアクティブファンドが見つからない以上は、パッシブ運用のインデックスファンドやETFに資金が流れるのは自然なことなのですが、それで万々歳とも言えない。というのも、アクティブ運用とパッシブ運用は相互依存の関係にあり、さらにパッシブ運用というのはアクティブ運用の存在を前提にしたものだからです。パッシブ運用というのは、無数の投資主体の主体的な売買の結果として立ち現れる。もしアクティブ運用が消滅すると、それはマーケット自体の消滅ですから、同時にパッシブ運用も消滅します。
そんなわけで、アクティブ運用が行き詰っていることに関して、インデックス投資家だからこそ「それで本当にいいのかな?」という気持ちになってしまいます。もっとも、パッシブ運用の比率が高まれば高まるほど市場の価格形成機能が低下するはずですから、“市場の歪み”も大きくなるのでしょう。そうなれば、そこを突いて爆発的に儲かるアクティブ運用が登場するかもしれません。そうなれば、またまたアクティブ運用に注目が集まるかもしれません。なるほど世間は難しい。