エイプリルフールですが、ネタじゃなくて真面目なエントリーですよ。すでに多くのインデックス投資ブロガーさんが紹介していますが、SBI証券が個人型確定拠出年金プランにさらなる低コスト投信を一挙に投入する可能性が出てきました。日経新聞解説委員の田村正之さんが特ダネとして報じています。
個人型DC、結構多い「古くて残念な品ぞろえ」(NIKKEI STYLE)
もともとSBI証券の個人型確定拠出年金プランは口座管理手数料がスバ抜けて安く、商品ラインアップには低コストなETFに投資するEXE-iシリーズが含まれるなど、もっともお得な金融機関でした。そこに加えて、さらに低コストな投資信託がラインアップに投入されるとなると、個人型確定拠出年金を通じて資産形成しようとしている個人投資家にとって、最有力の選択肢となります。この動き、ちょっと見逃せません。
個人型確定拠出年金は掛金全額が所得控除でき、運用期間中の運用益が非課税となるなど課税繰り延べ効果の大きい商品です。原則60歳までは換金できませんが、換金時には退職所得控除や年金控除の対象となるので、事実上の非課税口座となります(高額の退職金や年金をもらえる人は課税される可能性もあります)。このため老後に向けた資産形成を考える場合、最初に検討すべき国の制度です。
ただ、確定拠出年金は金融機関によって必要な口座管理手数料が異なり、投資できる商品ラインアップも異なります。このため自分で金融機関を選ぶ個人型確定拠出年金の場合、口座管理手数料が安く、低コストなインデックスファンドなどをラインアップしている金融機関を選ぶことが大切です。従来は口座管理手数料の安さなら残高が50万円を超えると手数料無料となるSBI証券か、低コストなインデックスファンドをラインアップする野村證券とりそな銀行が有力な選択肢であると、このブログでもたびたび紹介してきました。
ところが今回、SBI証券がさらなる低コスト商品を個人型確定拠出年金プランに投入する可能性が出てきました。田村さんの記事は次のように書いています。
例えばSBI証券は4月にも、主要資産クラスの信託報酬が最低水準の投信を一挙に投入方向だ。手数料も低いため、個人型DCを利用する際のかなり有力な選択肢になりそうだ。「主要資産クラスの信託報酬が最低水準の投信」というところが重要です。個人的な希望としては、国内債券や国内株式なら信託報酬0.1%台、先進国株式でも0.2%台、新興国株式で0.3%程度に抑えることができれば、素晴らしいラインアップとなるでしょう。なにしろ、もともとSBI証券の個人型確定拠出年金は口座管理手数料が圧倒的に安いですから、商品ラインアップまでさらに低コスト化すれば、それこそ個人型確定拠出年金プランの選択肢として一択になります。
私は自身はこれまで琉球銀行で個人型確定拠出年金を積み立ててきました。拠出を始めたころは、琉球銀行の商品ラインアップに低コストなインデックスファンドがそろっていたからです(現在は同じ商品を少しだけ口座管理手数料が安い野村證券で買うことができます)。しかし、SBI証券の商品ラインアップが強化されるなら、場合によってはSBI証券のプランに移換することを検討しようと思います。
ところで、今回の報道が事実なら(田村さんの記名記事なので飛ばし記事ということはないでしょう)、なぜこの時期にSBI証券が個人型確定拠出年金プランの強化に踏み切ったのかというのも大いに気になるところです。ここからはあくまで私見です。現在、法律改正の準備が進められており、早ければ2017年から個人型確定拠出年金の加入対象が大幅に拡大される見通しです。これまで加入できなかった公務員や主婦も加入が認められる方向で議論が進んでいますから、順調にいけば個人型確定拠出年金の市場が急拡大します。
そして、長期運用が原則である年金プランという性格上、この分野は先行者利益が極めて大きい。いったん加入すると、自分が加入しているプランと比べてよほど魅力的なプランが登場しない限りは、移換手続きまでとる人は少ないでからです。そういう意味では、SBI証券は今後の市場拡大を見すえて勝負に撃って出たといえる。ここで一気にシェアをとってしまおうという戦略なのかもしれません。だとすると、なかなか野心的な試みです。
こうなってくると、他の金融機関の動きも見逃せません。もしかしたら、今回のSBI証券の動きがきっかけとなって個人型確定拠出年金プランでも金融機関による低コスト競争が始まるかも。そうなると、受益者にとってはますます個人型確定拠出年金に加入する魅力が増すというもの。その意味でも、今回のSBI証券の動きを高く評価しながら、正式の発表を待ちたいと思います。
【追記】
報道の予想通り、4月22日にSBI証券の個人型確定拠出年金プランのラインアップが大幅に拡充されました。
SBI証券の個人型確定拠出年金プランが大幅パワーアップ―商品ラインアップ拡充で選択肢として最有力に
【追記】
現在はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、イオン銀行、松井証券のiDeCoプランがいずれも運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえています。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランも研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン、楽天証券確定拠出年金プラン、イオン銀行確定拠出年金プラン、マネックス証券確定拠出年金プラン、松井証券確定拠出年金プラン
また、個人型確定拠出年金については竹川美奈子さんの金融機関がぜったい教えたくない 年利15%でふやす資産運用術と岡本和久さんの自分でやさしく殖やせる 「確定拠出年金」最良の運用術が非常に参考になります。関心のある方は、こちらも一読をお薦めします。