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2016年4月9日

入口が平均なら出口も平均でいいじゃない―インデックス投資における出口戦略批判について



インデックスファンドを積立投資していると、ときたま「将来、ファンドを解約する段階で暴落が起こったらどうするんだ?」という、いわゆる「出口戦略批判」が寄せられます。これはインデックス投資は登場したころからある非常に古い批判です。だから真面目にインデックス投資や積立投資について勉強し、真摯な気持ちで実践している人にとっては、すでに解決済みの問題なのですが、なぜか定期的に疑問や批判が寄せられたりするから不思議なものです。そこであらためて私自身が投資の出口戦略についてどのように考えているかをメモしておきたいと思います。

せっかく長期投資で長年にわたってインデックスファンドを積立投資したのに、いざ老後など現金が必要になったときに、リーマン・ショックのような大暴落が起こって、積み上げた資産がマイナスになったらどうしようというのは、ごく自然な心配。若いころなら「安く買付けできるぜ」と喜べるのですが、年を取ってからだと、そんな時間的余裕がないからです。だから「インデックス投資は出口戦略が弱点」と言われてしまう。でも、こういった問題はすでに多くのインデックス投資家の間で解決がついています。それは、インデックス投資は入口で積立投資という手法を採用した以上、出口で換金のタイミングを計るというのは理論が一貫しなということです。

そもそもインデックス投資というのは、銘柄選択などに起因する超過収益を放棄する代わりに、確実に市場平均のリターンを確保することが目的です。そして積立投資は買付タイミングを分散することで、安値玉は拾えないけれども、高値掴みも避けて時間軸の中での平均的な価格で対象資産を買付けることを目指しています。つまり、両方とも最初から平均を目指して投資の入口に立っている。ところが出口戦略について云々する場合、突然に分散による平均化という大原則を忘れてしまうから混乱する。なぜかタイミングを計って一括で換金することを前提に有利不利という議論がなされるから、おかしなことになるのでしょう。

投資の入口(購入)の段階で平均を確保することを目指しているなら、出口(換金)の段階でも平均を目指さないと論理が一貫しません。だから、積み立てた資産を取り崩す段階になれな、やはり換金のタイミングを分散して、換金額の平均を確保できればいいはずです。つまり、定額や定率で積み上げた資産を分散して取り崩していけばいいだけです。あるいは細かいことを考えずに、必要に応じて換金してもいい。すくなくともタイミングを分散して換金すれば、相場暴落などによって一時的に資産が目減りしても、その資産の期待リターンがプラスである限りは、マイナスも吸収されていきます。そして換金期間を通じて、トータルでは平均換金価格を確保できます。平均買付価格と平均換金価格の差が正味の投資成果ということになり、それは物足りない数字かもしれません。でも、インデックス投資や積立投資というのは、そういったものです。

だから「入口が平均なら出口も平均でいいじゃない」というふうに割り切ってしまえば、出口戦略という問題設定自体が無意味になる。だいたい、個人投資家がある年齢に達したからといってきれいさっぱり投資から足を洗って、リスク資産をすべて無リスク資産に換えてしまうなどといったケースは見たことがありません。だいいち、資産運用というのは死ぬまで続くわけですから、やはり換金のタイミングを計るという考え方自体が非現実的なのです。年を取ってお金が必要になれば、含み益だろうが含み損だろうが好きなだけ換金してしまえばいい。総資産がマイナスにさえならなければいいのですから。

その点では、最近はネット証券などで投資信託の自動定額解約といった便利なサービスがあります。これを使えば、誰でも簡単に換金タイミングの分散ができ、トータルで平均換金価格での現金化が可能になります。これは個別株などにはない投資信託の利点です。投資信託は購入時に少額から分散購入できるのと同じように、換金時にも少額から分散解約できる。これを生かして、資産形成の段階は積立投資をし、資産取り崩しの段階では定額解約を活用する。入口も平均、出口も平均になるので投資手法として首尾一貫します。投資戦略において、首尾一貫するというのは、とても大切なことです。

【補足】
ところで、資産を分散して換金する方法には、定額引き出しのほかに定率引き出しという方法があります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、資産をより息長く運用しながら取り崩すという点では、定率引き出しの方が優れます。なぜなら、相場下落など資産が目減りしているときは引き出し額も小さくなるので、運用による収益率が低下しずらいから。これは運用しながら引き出すということを考える場合、非常に面白い観点です。この問題は、例えばフィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史さんが以前から指摘しています。今後、証券会社にはぜひとも自動定額解約サービスだけでなく、自動定率解約サービスも実用化してほしいものです。

【参考記事】
『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』―生活実態に即した資産形成・運用ノウハウを完全網羅

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