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2016年3月7日

女性投資家の裾野を広げるためにも夫婦別姓制度を認めるべきでは



このほど妹が結婚したのですが、結婚すると金融機関との付き合いも大変。なにが大変かというと、姓が変わることで銀行・証券口座や保険の名義変更がものすごく面倒くさいのです。妹も仕事を休んで処理していました。日本の場合、結婚すると女性が男性側の姓に代わるケースが多いですから、金融取引の面で負担が大きいのがよくわかります。なんとなく女性投資家の負担が大きいですね。それこそ女性投資家の裾野を広げるためにも夫婦別姓制度を認めるべきではと感じました。

最近は普通に仕事をしているだけで銀行口座や保険契約は増えるものです。私の場合も個人的に使っている銀行・証券口座のほかに、別の銀行に仕事の経費振込口座があったり、会社が退職金積立のために私の名義で契約している養老保険などがあったりします。クレジットカードもたくさんあるでしょう。女性の場合、結婚して姓を変える際にこれら口座や契約の名義変更も行わなければなりませんから、大変な負担です。ましてや、投資などをしていて複数の証券口座や直販投信の口座を持っていたりしたらなおさらです。

日本の場合、結婚すると女性が姓を変更するのが一般的ですから、よくよく考えると女性にだけこんな負担を強いる制度が現在まで続いているというのがじつに不思議。もし女性の姓に変更する男性が多ければ、きっと制度改革を求める声があっちこっちから起こったはずです。ということはおそらく、女性が自分の名義でそれなりの資産を持つことを想定していなかったということであり、もすごく前時代的な感覚です。

ちょっと思考が飛躍するかもしれませんが、こういった不便な制度が女性の間で投資を普及させる妨げになっているような気がします。だとすると、女性にも投資の裾野を広げるためには夫婦別姓制度を認めるべきではないでしょうか。そうすれば女性投資家の結婚による負担は大きく減ります。また、男性が女性の姓に変更するケースもありますから、その場合でも、余計な負担なく投資のための口座を保有し続けることができます。

ところで、夫婦別姓制度には様々な観点からの賛否があるわけですが、私は日本の伝統を守るという保守の立場から夫婦別姓に賛成しています。現在、日本で「姓」というのは、もともとは「苗字」とされたものです(本来、姓は源平藤橘などです)。そして古来より日本では夫婦で苗字が異なるのが普通でした。だから源頼朝の奥さんは北条政子だし、足利義政の奥さんは日野富子です。日本は伝統的に夫婦別姓(別苗字)の社会なのです。夫婦同姓制度になったのは明治31年の明治民法からの話ですから、たかだか100年ほどの歴史しかありません。日本国2000年の歴史を考えれば、夫婦同姓は伝統でも何でもない。

夫婦別姓反対論の中には、子供の姓をどうするかという観点もありますが、これも歴史を振り返れば兄弟で苗字が異なるのは珍しいことでも何でもありません。例えば新田義貞の弟は脇屋義助です。兄弟といえども別家を立てれば、別の苗字を名乗るのが普通だったのです。それで一族としての一体感が毀損するかといえば、まったくそんなことはない。ちなみに私の祖父は幼少時に絶えていた親戚の家名を継いだので、兄弟の中で1人だけ苗字が異なりました。それでも死ぬまで兄弟の仲は円満でしたし、一門一統としての結束も固かった。

もちろん、結婚したらパートナーと同じ姓を名乗りたいという人も少なくありません。そういう人は現在のままでいいわけです。つまり、希望に応じて姓を変更するのか変更しないのかを選べる選択的夫婦別姓制度を採用すれば問題ありません。

いずれにしても結婚する際に男女どちらかの姓が変更されることで、金融機関とのやり取りに無駄な労力を割かれるのは、契約者だけでなく金融機関の営業政策上のデメリットも多いはず。具体的なコストだってかかります。そして現在、多くの金融機関は女性投資家の裾野を広げようと努力しているわけです。それならまず金融業界や運用業界こそ夫婦別姓に賛成するべきではないでしょうか。ふとそんなことを考えたわけです。

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