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2016年3月25日

知らない間に投資する人が増えている



フィデリティ退職・投資教育研究所が恒例の「サラリーマン1万人アンケート」の結果を発表していました。
波乱相場に前向きに立ち向かう個人投資家 - 2016 年のサラリーマン1 万人アンケートでわかった個人投資家の投資姿勢(フィデリティ退職・投資教育研究所)

2010年以降、投資をしている人の比率は低下が続いていたのですが、2016年の調査では久しぶりにこの比率が上昇したというのは興味深いものがあります。今年に入ってから株式相場はボラティリティの高い状態が続いているのですが、短期的な相場の動きに惑わされずに長期的視点から積立投資などを実行している人が増えているというのは面白い。日本では自分が投資していることを声高に主張する人は少数派です。だから日常生活の中では気づきにくいのですが、意外と自分の知らない間に投資する人が増えているのです。

今回のアンケート結果によると、投資している人の比率は31.6%となり、若干ながら増加しました。15年まで比較的好調な相場が続いていたのですが、16年に入ってから株価が大きく下落し、かえってエントリーしやすくなったという分析は面白い。やはり相場というのは、下落こそが新たな買いを生む契機だということがよくわかります。また、日本人個人投資家に強い逆張り志向もうかがえる点は個人的に興味深いものがあります。

投資に対するイメージが好転しているのも特徴でしょう。調査によると投資に対するポジティブイメージの合計数値は2010年の22.8%から2016年には27.4%へと、約5ポイント増加しています。これに対してフィデリティ退職・投資教育研究所では次のように分析しています。
こうした傾向は、金融相場の年々の変動とは関係ないところで進んでいると思われる。これまでのアンケート結果の分析からは、20代、30代という相対的に若い世代は、下落一辺倒だった90年代を知らない現役層で「投資」に対して極端にネガティブなイメージが少ないことがわかっている。
また、若い世代を中心に投資商品の中身が変化していることも見逃せません。個別株の比率が低下する一方、投資信託の比率が高まっています。また、毎月分配型投資信託は6年連続で比率が低下し、FXも2015年、16年と連続して比率が低下しました。また、資産形成を実行している人のうち22.4%の人が積立投資していて、やはり若い世代を中心に投資に対する正しい知識が普及しつつあることをうかがわせます。

ただ、やや気になる点も。投資理論の理解度に関する分析で「時間分散」の有効性に対する理解が高まる一方で、「長期投資」「分散投資」については、これを有効である考える人の比率がともに低下しているます。このあたりの理由をもう少し踏み込んで分析してくれると面白いのに。やっぱり未来に対するポジティブなイメージが低下しているのかしら。シーゲル博士の株式投資株式投資の未来を読んでもらいたいところです。

老後に対する危機意識も一段と強まっているとして、調査では次のようにまとめています。
「老後のための資産形成として行っていること」を4つの選択肢で聞いた。昨年の調査と比べると、「積極的な資産運用」、「計画的貯蓄」、「できる範囲の貯蓄」はいずれも増加し、「何もしていない」が初めて減少した。昨年まで続いた「やる人」と「やらない人」の2極化から、老後に向けた資産形成を「やらざるを得ない」とみる人が増える傾向に変わったのかもしれない。
このあたりは個人的な感覚とも一致しました。べつに投資である必要はありませんが、やはり老後に向けた資産形成は「やらざるを得ない」。とくに若い世代にの資産形成というのは、もはや”儲けたい”といった浮ついたものではなく、一種の生活防衛ともいえる悲壮なものなのです。たぶん、高齢層と若年層では、投資に対する心構えが根本的に異なっている可能性があります。投資対象商品の変化にもうかがえましたが、もはや若年層はボッタクリ商品なんぞを相手にしている暇はないということです。

そのほかにも興味深い点が多々ある調査結果でした。日本では、投資していることを声高に主張する人は少数派です。だから、実際にどれだけの人が投資ているか実感としてよくわからない。自分の周りを見渡しても、まるで投資なんか誰もしていないように見えます。しかし、こういった調査を改めて見てみると、やっぱり徐々にですが、自分の知らないところで投資している人が増えている。「投資なんて、一部の人がやっているだけ」と思っているのは、案外と自分の世間が狭いだけなのかもしれません。

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