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2016年3月20日

保険と貯蓄・資産形成は分けて考えたい―貯蓄性保険の窓販手数料が開示へ



銀行などの窓口で販売されている貯蓄性保険の手数料が、早ければ今年10月から契約者に開示されるそうです。

窓販手数料、10月開示=貯蓄性保険を透明化-生保業界(時事ドットコム)
生保、銀行窓販コスト透明に 変額年金など手数料開示(「日本経済新聞」電子版)

これまでも保険商品の手数料というのは不透明な部分が多かった。しかも最近は日銀のマイナス金利導入で銀行の収益力が低下していますので、手数料収入の大きい貯蓄性保険の販売にドライブがかかる可能性があっただけに、今回の金融庁の指導は、じつに時宜にかなったものです。その上でさらに言うと、そもそも貯蓄性保険という商品自体に、個人的に大いに疑問を持っています。保険と貯蓄・資産形成は完全に分けて考えるべきではないでしょうか。

一般的に契約者が支払う営業保険料は、純粋な掛金である純保険料と管理運営費用をまかなう手数料としての付加保険料で構成されていますが、窓販保険の場合、さらに保険会社が銀行などに支払う販売手数料も含まれています。この窓販コストがじつに不透明で、日経新聞の記事によると、保険料の5~7%、なかには10%近い商品もあるとか。貯蓄性保険というのは一種の運用商品ですが、同じ運用商品である投資信託の悪名高い販売手数料ですら1~3%程度だということを考えると、極めて暴利に思えます。

なにより問題なのは、これまで手数料が開示されていなかったことです。投信の場合、ある意味で受益者は納得も得心もして手数料を支払っているといえるのに対して、窓販の貯蓄性保険は、契約者の知らないところで手数料が抜かれている。これは保険商品自体の付加保険料にもあてはまりますが、とにかく商品のコストの内実が不透明だから、不信感を持たれるわけです。コソコソ売っているうちはいいけれども、さすがに販売総額が年3兆円に迫るようになると、金融庁も黙っていないといういつものパターンでした。

そもそも、保険に貯蓄や資産形成目的を求めること自体に限界があるともいえます。もともと保険というのは、めったに遭遇しないけれども、直面すれば貯蓄や資産形成では補えないリスクをヘッジする相互扶助の仕組みです。だから、掛け捨てが基本だし、損得勘定で判断してはいけない。もちろん一時払い終身保険などは保険でしか設定できない商品ですから、長生きリスクに備える商品として意味はあります。しかし、これも儲かるから加入するのではありません。あくまで長生きリスクをヘッジするためですから、早死にすれば損か、よくて収支トントンになります。でも、保険としてはそれで十分に役割を果たしたことになる。早死にする人は、長生きリスクに直面せずに済んだわけですから。

保険と貯蓄・資産形成を完全に分けて考えるべきということは、現在においてますます重要になるかもしれません。というのも、マイナス金利に代表されるように世界的な低金利が長期化するなかで、現在は極めて運用難の時代だからです。こうした環境では、貯蓄性保険の予定利率も低水準にならざるを得ず、はっきりいって保険に貯蓄や資産形成としての妙味はないからです。これは私が言っているのではなく、“ミスター生保”ことライフネット生命の出口治明さんも生命保険とのつき合い方 (岩波新書)の中で明言していました。生命保険会社のトップ自身が指摘しているわけですから、やはりそうなのでしょう。

そして、貯蓄や資産形成としての妙味がない上に、高額の手数料まで抜かれていたのでは、話にならないわけです。そういう意味では、今回の金融庁による窓販保険の手数料開示への指導は、とてもいいことす。しっかりとコストの内実を把握したうえで、買うのか買わないのか判断できるようにすることは、金融機関として消費者に対する最低限の責任だからです。

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