2015年12月5日

三井住友・DC年金バランス(愛称:マイパッケージ)シリーズの使い方



たわら祭りですっかり影が薄くなってしまったのですが、三井住友アセットマネジメントの確定拠出年金(DC)専用ファンドから新たに4ファンドが一般販売開放されることになりました。12月4日から楽天証券で販売が始まっています。

DCバランスファンド マイパッケージシリーズ 4銘柄を新規取扱い(楽天証券)

新たに一般販売が開放された三井住友AMの「DC年金バランス(愛称:マイパッケージ)」シリーズは、国内債券、先進国債券、国内株式、先進国株式に分散投資するバランスファンドです。資産配分の異なる4本のファンドでシリーズを構成していますが、信託報酬(税抜)はいずれも0.2%台ですから、極めて低コストなバランスファンドといえるでしょう。ただ、資産配分の中身に関して好みが分かれるところ。また、資産配分の異なる4ファンドをシリーズとしてラインナップしているのは、DC専用ファンドならでは。このあたりに三井住友・DC年金バランス(マイパッケージ)シリーズの面白い使い方があるのかもしれません。

今回、一般販売が開放されたDC年金バランス30/50/70DC年金バランスZEROの資産配分と信託報酬(税抜)は以下のようになります。

DC年金バランスZERO(マイパッケージZERO) 信託報酬:年0.22%
国内債券75%、先進国債券20%、短期金融資産5%

DC年金バランス30(マイパッケージ30) 信託報酬:年0.22%
国内債券55%、先進国債券10%、国内株式20%、先進国株式10%、短期金融資産5%

DC年金バランス50(マイパッケージ50) 信託報酬;年0.23%
国内債券35%、先進国債券10%、国内株式35%、先進国株式15%、短期金融資産5%

DC年金バランス70(マイパッケージ70) 信託報酬:年0.24%
国内債券15%、先進国債券10%、国内株式50%、先進国株式20%、短期金融資産5%

また、各資産のマザーファンドのベンチマークは以下の通りです。

国内債券:NOMURA-BPI総合
国内株式:TOPIX(配当込み)
先進国株式:MSCI KOKUSAIインデックス
先進国債券:シティ世界国債インデックス(除く日本)
短期金融資産:有担保コール翌日物

いずれも極めて低コストなバランス型インデックスファンドです。一般販売されているバランスファンドでは<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)の信託報酬(税抜)が年0.34%ですから、DC年金バランスシリーズは、さすがDC専用ファンドと思わせる低コストです。ただ、資産配分がやや国内株式に偏重しているのが好みの分かれるところでしょう。あまり為替リスクをとりたくないけれども、海外資産への投資も行いたいという人には向いているかもしれません。

また、株式への投資比率が0%、30%、50%、70%と異なる4ファンドでシリーズ構成するというのは、DC専用バランスファンドでは、けっこう一般的な方法です。これは一般/特定口座での運用は原則無期限であるのに対し、DC口座での拠出・運用は拠出が60歳まで、運用のみでも70歳までに限定されるからです。運用期間が有限のため、運用期間終了時のいわゆる“出口戦略”を意識した商品設計となっているわけです。

つまり、運用期間が長く、リスク許容度も大きい20代や30代は株式70%で積極運用し、40代からは株式50%に、そして換金時期が近づく50代や受給段階となる60歳以降は株式30%や0%で安全運用しようというわけです。年齢や運用期間の長短によるリスク許容度の変化に応じて商品を乗り換え(スイッチング)することで、換金時に市況が悪化して資産が大きく目減りする危険性をできるだけ抑えようという考え方です。企業型DCの場合、企業年金だけでなく退職金の一部もDC口座で運用されている場合も多いので、年齢や運用期間の長短に応じたリスク許容度の変化に対応するニーズというのは、それはそれで切実なものがあるのです。

こうしたことを考えると、DC年金バランスシリーズのユニークな使い方もあるのかもしれません。投資信託の積立などによる長期投資の場合、意外と将来の換金時の出口戦略を意識する人が少なくありません。そんな人でバランスファンド1本で運用を行う場合、将来にリスク許容度が変化した際のアセットアロケーション変更にはひと工夫必要でした。しかし、DC年金バランスシリーズなら、リスク許容度を変更する際に商品をまるごと乗り換えてしまえばいいわけです。乗り換え時以外は、リバランスの手間もかからないのでバランスファンドの利点はそのままです。

ただ、こうした使い方のメリットは、やはりDC口座でこそ発揮されるものでしょう。DC口座ならスイッチング時に課税されませんので、課税繰り延べ効果が最大限発揮できますが、通常の口座でやると、スイッチング時にファンド売却益に対して課税されてしまいますので、課税繰り延べ効果が低下し、運用効率が若干低下します。また、運用商品が限定されるDC口座と異なり、通常の口座なら、その金融機関が扱っている全商品を買うことができますから、べつにDC年金バランスシリーズに限定せずに、もっと自分のリスク許容度に応じた商品-それこそ元本保証型商品も含めて-を選んで乗り換えてしまえばいいわけです。

また、個人的には投資で“出口戦略”を考えることについても疑問を持っています。運用期間に限りがあるDC口座と異なり、通常の口座での資産運用は、それこそ死ぬまで続くと考えているからです。例えば80歳まで生きたとすればどうなるでしょうか。60歳からの運用期間は20年です。70歳まで生きたとしても10年です。これはこれで十分に長期投資です。だったら、ある程度は株式を組み込んだポートフォリオでも十分に短期的な相場変動に対応できるのでは(ちなみに60代で死んでしまえば、そもそも老後資金の心配自体がなくなります)。だからDC年金バランスZEROは、ちょっとやりすぎ。どうしてもリスクを抑えたいなら現金の保有比率を上げた方がコストもかからないわけですから、これはあくまでDC口座で運用期間の最後の数年を逃げ切るために利用すべき商品でしょう。

それでもDC年金バランスシリーズは、極めて低コストなバランスファンドであることは大いに評価できます。国内外資産に分散投資するバランスファンドで信託報酬が年0.2%台の商品が登場したことは画期的です。これをきっかけにバランスファンドの低コスト競争が本格化すれば、個人投資家にとってのメリットは極めて大きいでしょう。ぜひともほかの運用会社も追随して欲しいものです。

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