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2015年12月6日

低コストなファンドが登場しても慌てて乗り換えない理由



三井住友アセットマネジメントによる確定拠出年金専用ファンドの一般販売開放、ニッセイアセットマネジメントの<購入・換金手数料なし>シリーズの信託報酬大幅引き下げ、そしてDIAMアセットマネジメントの「たわらノーロード」シリーズの登場と、従来の水準を大きく超える低コストインデックスファンドが相次いで登場しています。これだけ低コストなファンドが登場すると、これまで積立投資していたファンドから積立商品を変更したインデックス投資家もいることでしょう。乗り換えを検討している人も多いはず。かくいう私もそのひとりです。これまでは三井住友トラスト・アセットマネジメントのSMTシリーズと三菱UFJ国際投信のeMAXISをメインに積立を実行してきたのですが、さすがにこれだけ信託報酬に差が広がってくると、どうしても乗り換えを検討せざるをえない。ただ同時に、ここは乗り換えたい欲求をぐっと我慢して、もうしばらく様子を見ようとも考えています。なぜ、より低コストなファンドが登場しても慌てて乗り換えないのかというと、やはり理由があります。

より低コストなファンドが登場しても、安易に乗り換えない理由は、新しいファンドの実力が未知数だからです。とくに新規設定の場合、すぐに飛びついてはいけないというのは投資信託を通じた投資の大前提。やはり実質コストがどうなっているのか、あるいは純資産残高の伸びはどうなのかということを見極めたいという気持ちが強い。なにより、そのファンドの将来性というものを見極めることが非常に大切だと考えているからです。インデックス投資は基本的に10年、20年という長期スパンで実行するものですからなおさら。この点に関して少し古い記事ですが、カン・チュンドさんが丁寧な説明をしてくれています。

信託報酬が安いファンドがどんどん出ていますが、新しいファンドに乗り換えたほうがよいのですか? その1
信託報酬が安いファンドがどんどん出ていますが、新しいファンドに乗り換えたほうがよいのですか? その2
(カン・チュンドのインデックス投資のゴマはこう開け!)

新しく登場したインデックスファンドで一番怖いのは、やはり繰上償還されてしまうリスクでしょう。実際に今年も9月にi-mizuho新興国債券インデックスが純資産残高の低迷から繰上償還されるといったことが普通にありました。もともとインデックスファンドは運用会社や販売会社にとって収益性の高い商品ではありませんから、つねに繰上償還のリスクがあるのです。ましてや最近登場した超低コストファンドは、運用会社にとっても販売会社にとっても収益性をさらに落とした商品になっているはずです。こうなると、なにかのきっかけで撤退してもおかしくありません。皮肉なことですが、インデックスファンドの低コスト化はファンドの継続性に対するリスクを高めているともいえるわけです。

また、運用会社が頑張っても販売会社が音を上げてしまう可能性だってあります。現在は金融機関も会社全体での収益が堅調なので大丈夫だと思いますが、いったん景気が悪化して、金融機関の業績が悪化すれば、低採算の商品というのは真っ先にリストラの対象になります。その時に十分な純資産残高が積み上がっていなければ、金融機関によっては低コストインデックスファンドの販売を取り止めるといった事態もないとは言えません。繰上償還されなくとも、自分が口座を持っている金融機関での販売が取り止めになれば、受益者としてのダメージは同じです。(この点で、じつは直販投信というのはファンドの継続性という面で非常な強みを持っているのです)。

そう考えると、より低コストなファンドが登場しても慌てて乗り換えてはいけないという気がしてきました。では乗り換えの判断はどこですればいいのでしょうか。この点に関してカン・チュンドさんの次のような"乗り換え条件"の指摘が非常に参考になります。
1.インデックスファンドをめぐる
コストの【競争】は最終局面である。

2.そして、
両ファンドの【継続コストの差】は
相当高い確率で
このまま存在し続ける。

上記のふたつに関して、
『確信』を持たれる必要があると思います。
このうち1に関しては、私の確信は相当大きくなっています。なにしろ資産カテゴリーによっては国内ETFよりもコストが安いインデックスファンドが登場しているのですから。マザーファンドベースで考えても現在の純資産残高の規模では、よほどのことがない限りこれ以上の信託報酬引き下げは考えにくい。問題は2です。継続コストの差が相当高い確率でこのまま存在し続けることを確信するには、もう少し時間が必要。だからしばらくは様子を見ようということになりました。これが、低コストなファンドが登場しても慌てて乗り換えない理由です。

そして大事なことですが、だからといっていち早く乗り換えた人を批判してはいけません。より低コストなファンドが登場し、それが投資家の支持を集める、すなわち純資産残高を大きく伸ばし、同時に既存ファンドの純資産残高の伸びが止まる、あるいは資金流出という現象が起こることは大切なことだからです。そうなって初めて既存ファンドの運用会社や販売会社は事態の深刻さを認識し、信託報酬引き下げの必要性を認識するはずです。やはり投資家として、ある程度のアクションを起こさなければ、金融機関が自己変革するインセンティブが働かないのです。ですから、いま商品を乗り換えた人は偉い。なにごとも先駆者というのは偉大なのです。

そんなわけで、私自身はもうしばらくは様子を見ることにします。その上で今後も保有する既存ファンドに動きがなければ、まずは積み立てる商品の変更から始めることになりそう。その後も動きがないなら、いよいよ全面的に購入する商品を乗り換えることになるでしょう。いずれにしても焦ってはいけない。やはり投資の大原則は「頭と尻尾はくれてやれ」。これは投資信託の商品選択にも当てはまるでしょう。

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