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2015年12月18日
個別株が買いやすくなるかもー2018年10月1日までに売買単位が100株に完全移行へ
現在、日本の個別株の売買単位は1000株と100株の2種類があるのですが、このほど全国証券取引所が2018年10月1日までに売買単位を100株に統一することに完全移行すると発表しました。
売買単位の100株への移行期限の決定について(東京証券取引所)
これで個別株がずいぶん買いやすくなるかもしれません。日本では個別株投資といえばお金持ちだけができるものと誤解している人も多いわけですが、売買単位が100株に統一されれば、個別株投資に必要な最低投資額が小さくなる可能性がありますから、もうお金持ちだけの投資方法とは言えなくなるのでは。個人でもある程度、分散したポートフォリオを組むことができるのでリスク管理上も非常にメリットが大きいといえます。
個別株の売買単位といえば、かつては1000株単位が普通でした。このため比較的株価の高い銘柄に投資しようとすると、かなりの資金が必要となり、株式投資の裾野を広げる大きな妨げとなっていました。また、1000株単位以外にも100株単位や1株単位の銘柄が混在していて、非常にわかりにくかった。そこで全国証券取引所では2007年に「売買単位の集約に向けた行動計画」を策定し、最終的に売買単位を100株に統一することを決めていました。このため現在、上場企業のうち2612社(76.2%)が売買単位を100株にしており、残り986社(27.4%)が1000株単位となっています(2015年12月現在)。そこでこのほど、残る売買単位1000株の企業に対しても2018年10月1日までに売買単位を100株に変更するように求めることになったわけです。
これが実行されると、個別株が非常に買いやすくなります。個別株投資のデメリットの一つに、1回の投資金額が非常に高額になってしまうという問題があります。例えば売買単位が1000株の銘柄を買う場合、三菱電機なら約130万円必要です。旭化成なら約80万円、東レは約110万円が必要です。これでは気軽に買えません。分散したポートフォリオを組もうとすると、非常に多額の資金が必要であり、個人投資家の場合、どうしても特定銘柄への集中投資となってしまいがちでした。これはリスク管理上もよろしくありません。
しかし、単位株が100株になると、ぐっと買いやすくなる。例えば現在、すでに売買単位が100株の企業だとパナソニックなら約12万円、クラレは約15万円、住友商事は約13万円で買うことができます。もちろん、トヨタ自動車のように売買単位が100株でも約80万円必要な超優良企業もありますが、それでも銘柄選択の幅がぐっと広がることには変わらない。
最低投資額が小さくなれば、個人投資家には様々なメリットがあります。第一に少ない投資額である程度分散したポートフォリオを組み易くなります。個別株でも20銘柄ぐらい保有すれば、かなりリスク分散できるといわれていますが、これを実行することも可能になるわけです。また、NISA口座で個別株を保有する場合も、NISA枠内で買える銘柄数がかなり増えるでしょう。買付の際の工夫も可能になります。例えば300株買おうと考えたときに、まず100株を打診買いして、その後の値動きを見て残りの200株を買い付けるといったこともできるので、心理的に高値掴みの心配が減るケースもあるでしょう。
なにより"株式投資はお金持ちがするもの"という妙な偏見が少しでも減って欲しいものです。ちなみに米国の場合、売買単位は基本的に1株。だから、例えばApple株も100ドル強で買えるわけです。こういう株式投資に対する具体的な敷居の低さが、米国の投資文化を支える物理的基盤になっているのでしょう。
その意味でも、日本も売買単位が100株に統一されて、個別株投資が身近になるのはいいことです。とくに私のようにインデックスファンドやETFを資産形成のコアに置きながら、趣味的に少額で個別株投資もするような超弱小投資家にとっては、今回の決定は大歓迎なのです。
(ただ、株価が100円未満の低位株企業は大変でしょう。期限までの業績を高めて株価を上げるか、株式合併で株価を上げるなどしないと、非常に恥ずかしい最低投資額になってしまいますから。)
※記事中の最低投資額は、いずれも2015年12月現在。