2015年11月24日

純資産残高3000億円の壁をどう乗り越えるか-ひふみ投信の第7期運用報告会に行ってきました



23日は大阪で開催されたひふみ投信の第7期運用報告会に参加しました。運用報告の内容自体は、すでに交付運用報告書などで開示されています。
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そんな中で興味深かったのが、ひふみ投信の今後に対する藤野英人社長の偽らざる心境が聞けたこと。現在、ひふみ投信のマザーファンドの純資産残高はひふみプラスと合わせて約1500億円ですが、「3000億円までは(いまの投資手法で)上手くやれるだろうが、その先は分からない」と明言しました。これは多くの日本株アクティブファンドに当てはまるのですが、純資産残高3000億円というのは、効果的な運用を行う上でのひとつの壁になっている。はたして、ひふみ投信は3000億円の壁をどう乗り越えるのでしょうか。

第7期も騰落率は+16.5%となり、参考指数であるTOPIX(配当込)の+8.4%を大きくアウトパフォームしたわけですが、これを藤野社長はシャープレシオの高い運用を目指した結果だと強調しています。市場心理が悪化すれば、あらゆる銘柄が下落しますが、市場心理か改善すると優良企業ほど大きく反発します。いまのところ、そういった優良企業の選別と投資が上手く機能しているといえるでしょう。

また、チャイナショックなど基準価額下落時にファンド解約が少なく、逆に新規資金の流入が多かったため、保有銘柄を売るのではなく、割安になった優良銘柄を買い増すことができたとして受益者に対してさかんに感謝の言葉を述べていたのも印象的でした。これは非常に重要なことですが、投資信託、とくにアクティブファンドというのは受益者と運用会社の信頼関係・団結力が運用成績に大きな影響を及ぼすのです。

今後の運用については藤野社長は、環境が厳しくなると見ています。とくに足元の景気に悪化の兆しがあること、消費も低迷傾向にあるとします。これは私個人の生活実感とも一致するので、大いに納得。また、ここにきて一部に円安の弊害が見え始めたことから政府・日銀もこれ以上の円安誘導となる政策は実行しないと見ています。中国経済については、厳しい状態が長引くと分析しています。こうした状況を踏まえ、ひふみ投信としても外部環境に左右されにくい優良企業への投資を継続するほか、デフレが有利な銘柄のポジションを増やすことを検討しているとか。

そんな中、興味深かったのが最後の質疑応答の中で藤野社長自らがひふみ投信の今後について率直な見解を披露したことです。それは、現在約1500億円あるマザーファンドの純資産残高が3000億円になるまでは現在の投資手法で十分に結果を出す自信があると断言する一方、3000億円を超えると、運用が厳しくなる可能性があるということです。多くの優秀な日本株アクティブファンドが陥ってきた「3000億円の壁」です。

よく考えると、これは当たり前の話です。純資産残高が小さいうちは小回りが効きますから、それこそ優良な中小型株に機動的に投資することができます。しかし、純資産残高が大きくなると、流動性の面から、そういった銘柄だけへの投資が難しくなる。否応なく大型株もポートフォリオに組み入れざるを得なくなります。そうなると、だんだんとポートフォリオがインデックスに類似していき、すると信託報酬が高い分だけインデックスから成績が劣後するというケースが増えてくるわけです。日本株ファンドの場合、その分岐点が純資産残高3000億円なのです。

ひふみ投信(+ひふみプラス)もいまのペースでマザーファンドの純資産残高が成長すれば、3000億円を超えるのも、それほど遠い時期ではないでしょう。そのときに備えてどうするのか。藤野社長は「いまから研究する」と言います。はたして、ひふみ投信がどうやって「3000億円の壁」を乗り越えるのか、受益者としても大いに気になるところです。

考えられる方法はふたつあるでしょう。ひとつは大型株を含む銘柄選択に戦略をシフトすること。その意味では、運用報告会でも壇上に立った八尾尚志シニア・アナリストが「ひふみ投信は中小型株に強いといわれているが、それ以外の分析も頑張っている」と強調していたのは示唆に富みます。

もうひとつは、思い切って海外株にまで投資対象を広げることでしょう。じつは、ひふみ投信は商品分類上、投資対象地域が「内外」となっているので、海外株への投資が可能です。個人的には、海外株へも投資するようになれば面白いと思う。ここでも地味で地道な中小型株を発掘できれば、日本株以上に大きなリターンが得られる可能性があります。ただその場合、それこそ藤野氏のような優秀なファンドマネージャー・アナリストを海外に配置する必要がありますから、人材確保の成否が大きなポイントになるでしょう。

いずれにしても、ファンドの成長にともなって投資戦略も変わらざるを得ません。なにより、そういった高級な悩みを抱えるほどにひふみ投信が成長していることはすごいことです。この日も会場は、ほぼ満員。受益者の期待の高さと信頼関係の強さをうかがわせました。受益者の期待に応えるためにひふみ投信が今後、どういった動きを見せるのか引き続き注目していきたいと思います。
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