「運用報酬に関する基本方針」の策定および公表について(三井住友アセットマネジメント)
低コストな確定拠出年金(DC)専用インデックスファンドの一般販売開放など思い切った施策が話題となっている三井住友AMですが、いよいよ信託報酬(「基本方針」では、より具体的に運用報酬という言葉を使っています)の合理性について検討すると断言しました。これは大変なことです。どこまで具体的な見直しがなされるのかはわかりませんが、少なくとも信託報酬のあり方について運用会社が自らを律するという行為に出たことの意味は大きい。これこそがフィデューシャリー・デューティーを履行するということです。三井住友AMのフィデューシャリー宣言の本気度に期待したいと思います。
このほど発表した「運用報酬に関する基本方針」はフィデューシャリー宣言に合わせて作成した「フィデューシャリー・アクションプラン」に基づき信託報酬設定に関する基本的な考えを示したものであり、基本方針として以下の4点が明示されています。
・運用報酬はお客さまに提供する運用サービスの対価であり、その内容に応じ報酬水準を決定しますこのなかでとくに重要なのは、2点目の「販売会社の手数料を含めて」手数料の合理性を追求すると断言したこと。販売会社の手数料こそ、日本の投資信託が高コスト体質になる原因の本丸ですから、そこに踏み込むことを断言したことを評価したい。また、3点目の「既存商品についても合理性を欠くものは改定します」と明言しているのが素晴らしい。現行の信託報酬の引き下げに言及しているわけですから、これも画期的なことです。
・販売会社の手数料を含め、お客さまにご負担いただくトータルの手数料についても商品・サービス内容に見合ったものにします
・報酬水準は環境の変化に応じて見直し、既存商品についても合理性を欠くものは改定します
・卓越したサービスの提供と一層のコスト管理に努め、お支払いいただく運用報酬に対する満足度の向上を図ります
また、「運用報酬に関する基本方針」の発表に合わせて、フィデューシャリー・デューティー(FD)第三者委員会の設置も発表されました。
「FD第三者委員会」の設置について(三井住友アセットマネジメント)
これによって利益相反関係やフィデューシャリー・デューティー全般をチェックするとのことです。これは非常に大切なことですが、フィデューシャリー・デューティーとは努力義務ではなく、履行義務です。問われるのはつねに「実行した」か「しなかった」かという是非だけです。それを第三者委員会で判定するわけですから、三井住友AMの覚悟がわかる。これも評価したいと思います。
今回の基本方針に基づき、三井住友AMがどういった具体的な行動をとるのかは、まだわかりませんが、もし文字通りに信託報酬の見直しなどを実行し、フィデューシャリー・デューティーの履行を本気で全うすれば、日本の運用業界にとってメルクマールとなる出来事になりそうです。当然、競合する他の運用会社への影響は無視できません。なぜなら、同じようにフィデューシャリー・デューティーを履行しようとする運用会社と、そうでない運用会社が存在するようになれば、私たち個人投資家はどちらの会社に資金を信託するでしょうか。答えは簡単に出ます。
そういう意味で、今回の三井住友AMの取り組みが、運用会社間のより健全な方向での競争につながることも期待したいと思います。