代表取締役社長交代のお知らせ(レオス・キャピタルワークス)
もともと、レオス・キャピタルワークスは藤野氏らが創業したものですが、リーマンショックなどの影響で経営危機となり、ISホールディングスの傘下に入ることで生き延び、社長もISホールディングスから派遣された岩田次郎氏が務めていました。今回、再び社長に返り咲いたことで藤野氏の感慨もひとしおでしょう。現在の相場環境は非常に厳しいものがあり、ひふみ投信の今後の運用もこれまでのように順風満帆とはいかないと思います。それだけに藤野新社長の責務は大きい。だからこそ受益者の一人として、なにはともあれ藤野新社長に期待したいと思います。
※藤野氏の投資に関する考え方は、以下の本が参考になります。
レオス・キャピタルワークスがISホールディングスに身売りする経緯は藤野氏自らが何度か話していますが、私は以前に日経新聞で読んだインタビューが非常に印象に残っています。
どん底で誓った理想の投信づくり(藤野英人)(日本経済新聞電子版)
なかでも次のエピソードが印象的。
幸い、救済してくれる会社が現れたんですが、実質的な身売りです。レオスの株式を100%手放し、経営権を失った瞬間に役員も外れました。ひふみ投信がそのまま生き残るかどうか分からなかったし、今後どうしようかと悩み苦しみました。どう生きたらいいか、ファンドマネジャーを続けていいのかと。99%やめるつもりで同僚に相談したら、「せっかくいい投資信託をつくろうと、いっていたのに……。もうしばらくやりましょうよ」と涙ながらに訴えられました。3250円を額に入れて自宅に飾っているというのは、なかなかふるっています。こういう経験は、起業家だけが持つ一種独特のこだわりというか、迫力を生むものです。このエピソードを知ってから、なんとなく藤野氏が信用できると感じたわけです。
その言葉を聞いてもう一度踏ん張ってみようと考えたんです。それから覚悟を決め、薄給だろうが何だろうが、このひふみ投信を本当にいい投資信託にしようとの思いで、再スタートしました。実は全3250株を1株1円で手放したんですが、振り込まれた3250円をATMから引き出し、いまでも自宅の額に飾ってあります。「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」というやつですよね。
今回、再び社長に復帰することで、その責務は一段と大きくなります。何しろ証券市場の環境が極めて厳しい。ひふみ投信はこれまで銘柄選択の妙で参考指数であるTOPIX(配当込)を大きく上回るリターンをたたき出してきたわけですが、これが今後は逆風になる可能性があります。というのも、下げ相場になると利益が残っている銘柄、すなわち大きく値を上げていた銘柄から売られるケースが大きく、そういった値上がり銘柄を多く保有するファンドの成績は、市場平均以上に落ち込む可能性があるからです。
だから、ひふみ投信の運用は今後、大変厳しい状況になるのではないでしょうか。この場合、ファンドとしてもっとも避けたいのは解約の増加です。下げ相場は、見方を変えれば割安になった銘柄を仕込むチャンスでもある。しかし、その局面でファンドの解約が増加すると十分な仕込みができず、その後の回復局面でのリターンが悪化する。そういう意味では、藤野社長の大きな役割は、これまで以上に受益者とコミュニケーションをとることになるでしょう。そうやって一時的に運用成績が悪化しても、受益者に納得も得心もさせることが重要になります。
なにはともあれ、藤野新社長に期待することにしましょう。素直な物言いが魅力のひふみ投信ですが、その素直さが今後の厳しい市場環境を乗り切る大切な要素になるでしょうから。
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