2015年9月29日

いま新興国投資から手を引くべきか

新興国の経済低迷が深刻になってきました。中国、東南アジア、ブラジルなど将来有望とされた国々が総崩れです。ブラジルに至ってはS&Pが外貨建て国債の格付けを投資不適格(ジャンク級)に引き下げたほどです。そして、実際に新興国からはどんどんと資本が流出している。投資が引き上げられているのです。こうした状況のなか、国際分散投資を実践する個人投資家は、どのようにふるまうべきなのでしょうか。一時的にでも、いまは新興国投資から手を引くべきなのでしょうか。こうした迷いを抱える人にとって、興味深い記事がモーニングスターに掲載されています。

ブラジルの過去20年の歩みから占う、16年の投資環境(モーニングスター)

ここで例に挙げられているのはブラジルですが、同様のことは中国や東南アジアにもあてはまります。少しタイムスパンを長くとって現状を観察すると、違った風景が見えてくるでしょう。経済危機といっても、いまとむかしではレベルが違うのです。

うかつにもこのレポートを読むまで、ブラジルの外貨建て国債の格付けが投資適格になったのがわずか7年前の2008年だったということを忘れていました。それ以前は、やはりブラジルは大変な経済危機に見舞われいたわけです。そのときと比べれば、現在の経済危機とはレベルが異なるということに気づきます。なんしろ1990年代にはインフレ率が年2000%を超えた時期もあった。事実上、経済活動を停止してインフレ抑制に取り組むような局面もありました。そのときの危機と現在の危機を比べて、論者は冷静な観察を示しています。
 この20年間でブラジルのGDPは3倍になり、国内消費も2倍以上に成長した。国民1人当たり所得も大幅に増え、確実に豊かになった。国際的にも投資適格国入り後は大量の資金が流入し、日本企業も一時は150社前後まで減った進出企業が、13年頃には、ハイパーインフレ前の400社まで戻した。
今のブラジルは昔と違い、メガバンクが利益を出し、金融システムが安定している。さらに、外貨準備高は十分あり、企業もある程度国際化し、公的機関はかなり民営化されている。あとは政治の問題だけなのである。2億人を突破し、伸び率は下がっているとはいっても未だに増え続けている人口をみても、市場にはまだまだ成長の余地がある。
同じようなことは、他の新興国にもあてはまります。インドネシアがアジア経済危機に直面したころは、よく暴動などが起こっていました。高速道路で横転・炎上する車を見たという人も少なくありません。現在、やはりインドネシアは景気低迷が深刻化していますが、道路はトヨタ車で溢れかえり、かつては外国人しか入れなかった日本食レストランに現地の若いビジネスマン・ビジネスウーマンが列を作っています。中国の経済崩壊が近いといわれますが、かつて中国は本当に経済が崩壊して大量の餓死者を出しています。いまはどうですか。中国の危機と言われながら、例えば大阪の心斎橋筋を歩くと買い物と食事を楽しむ中国人観光客でごった返しています。

国が発展するというのは、こういうことなのでしょう。直線的な発展などありえない。かならず紆余曲折があるわけです。どの国も長い時間軸の中では、良いときも悪いときある。でも、過去の悪い状態と現在の悪い状態を比較すると、やっぱり現在の悪い状態のほうが、驚くほどマシなのです。なぜそうなるのかといえば経済活動は人間の「生活」の総和だから。そして人間は「工夫」する生き物です。人は少しでも生活を良くしようとして工夫する。その工夫の集積が経済や文化・文明の発展だと考えていい。もっというと、悪い状態に陥ったときこそ、より工夫するものです。そして投資とは、この人間の工夫に賭けることに他ならない。だから記事が最後に指摘するように「16年以降は投資の季節になるかもしれない」というの考え方に賛同します。というよりも、こんなときに投資できないようでは、そもそも新興国に投資する資格はないのかもしれません。
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