2015年9月12日

投資信託の購入手数料を支払うことは大暴落を食らうのと同じダメージ

コモンズ投信の渋澤健会長、セゾン投信の中野晴啓社長、ひふみ投信の藤野英人CIOによる草食投資隊の座談会を読んでいたら、面白い表現を見つけました。

株式市場が崩れても、おカネを増やす方法(「草食投資隊をフォローせよ」東洋経済オンライン)

個人投資家が投資信託の購入手数料を支払うことは、そのたびに大暴落に遭っているのと同じくらいダメージがあるのだとか。言われてみると、確かにそうだと納得です。

最近、日経平均が1日で何円下げたかとか喧しいわけですが、金額ベースでなく率で見なければ実体を見誤ると3人は指摘しています。その上で、率で見ると意外なことが分かります。
渋澤 7月8日に日経平均株価が2万0376円から639円下げたということは、下げ率にして約3.1%。証券会社か銀行で株式投資信託を購入した時に支払う購入手数料くらいのものですね。「今年最大の下げ」と言っても、それは販売手数料と金額的には同じということになります。逆に言えば、販売金融機関を通じて投資信託を購入している大多数の人たちは、日経平均株価がこのくらい下げた程度のコストを、つねに支払っていることになります。
藤野 それはいい表現ですね。だからノーロード(販売手数料無料)の投資信託はよいなどと、僕らの投資信託をさりげなく宣伝したりして(笑)。
中野 本当にそうですよ。購入手数料3%って、投資信託を買った途端、日経平均株価が600円前後下げたのと同じことになるわけです。そう考えると、ノーロードがいかに有利かわかります。
これはまったく大事な指摘。株価が下がるとき、金額で見ると大変なことに思えるけど、率で見れば大したことがないのと逆で、投資信託の購入手数料は金額で見れば大変な高額にもかかわらず、率で提示されるので大した額ではないと錯覚してしまう。どちらも実体を見誤っているわけです。

こう考えると、投資信託の購入手数料というのは、途方もない高額だと分かります。そもそも投資信託の購入手数料は個別株の売買手数料とはまったく性格が異なる。個別株は保有には一切コストがかかりませんから、少なくとも売買手数料を投資家が証券会社に支払うことに合理的理由があります。しかし、投資信託は毎年信託報酬を支払っており、その信託報酬も運用会社、信託銀行、販売会社で分け合っているのですから、投資家からすれば金融機関の管理コストはきちんと負担しているはず。それなのに販売会社にだけ異常に高額な購入手数料をさらに支払う合理的理由はどこにあるのでしょうか。はたして販売会社は購入手数料の金額に見合うサービスを販売時に購入者に対して提供しているのでしょうか。

おまけに回転売買で何度も購入手数料を支払っていては、そのたびに大暴落を食らったのと同じレベルのダメージを受けてるわけですから、リターンが大きく悪化するのは免れません。購入手数料が3%程度というのは、それほど異常なレベルの負担だということを強調したい。もし、いまだに購入手数料を支払って投資信託を購入している人がいれば、実際の支払額をよく見て欲しいものです。株価の変動は率で見た方がいいけれども、手数料などコストは金額ベースで考えるべきだといえるでしょう。

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