セゾン投信がセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの実質信託報酬を9月11日から0.05%引き下げると発表しました。
「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」実質的信託報酬0.05%低減へ。2010年3月の0.03%低減に続き2回目。(セゾン投信)
すでに一部報道があったわけですが、正式発表となりました。これによりセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの実質信託報酬は従来の年0.74%±0.03%から、年0.69%±0.03%へと引き下げられることになります。わずか0.05%のこととはいえ、素晴らしいことだと思います。
今回の実質信託報酬の引き下げは、すでに一部で報道されていましたが、竹川美奈子さんが問い合わせたところ、投資先のバンガードのファンドの運用管理費の低減分を反映させたものだそうです。
セゾン・バンガードの実質的な運用管理費用(信託報酬)が2度目の引き下げ(About Money,Today)
どんな理由であれ、既存ファンドで信託報酬が引き下げられることは素晴らしいことです。というのも、日本では既存ファンドの信託報酬が引きされれるケースがほとんどないからです。コスト競争力が求められるインデックスファンドですら、新たに低コストなファンドが設定されることはあっても、既存ファンドのコストが引き下げられるケースは少ない。私の知っている限りでは、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドのほかは、三菱UFJ国際投信のeMAXISに対抗するために三井住友トラスト・アセットマネジメントのSMTシリーズが2度にわたって信託報酬を引き下げた例があるぐらいです(だから、これは画期的な出来事です)。アクティブファンドでは、ひふみ投信が長期保有者に対する優遇措置として実質的な信託報酬の割引を行っていることと、マザーファンドを同じくする「ひふみプラス」で純資産残高の増加に応じて信託報酬が低減する仕組みを採用しているぐらいです(これも画期的なことなのです)。
投資信託やETFの先進国である米国を見ると、バンガードなどは純資産残高が増加すれば信託報酬を普通に引き下げている。そうしないと、受益者が増えないような健全な競争原理が働いています。一方、日本は逆の現象が起こっており、純資産残高が増加すると、販売会社の取り分が大きくなる仕組みのファンドが多く、せっかく純資産残高が増えても、それによるコスト低減効果を受益者に還元する仕組みがほとんど整備されていません。これは、フィデューシャリー・デューティーの面からも大変問題のある状態です。
その意味でも今回、セゾン投信が2回目の信託報酬引き下げに踏み切ったのは、内容はどうであれ、特筆大書すべきことです。純資産残高が増加したことによるコスト低減の成果を、きちんと受益者に還元しているわけですから。フィデューシャリー・デューティーにもかなっている。さすが「フィデューシャリー宣言」は伊達ではなかったと感心しました。
こういった健全なファンド運営が、もっと日本でも広がって欲しいものです。今回のセゾン投信の試みが、そういった動きを促す一石になって欲しいものです。