2015年9月10日

株価の上昇は「稲妻の光る瞬間」のごとく

9月9日の東京証券市場は日経平均株価が終値で前日比1343円43銭高の1万8770円51銭となるなど大幅上昇しました。上げ幅は1994年1月31日(1471円24銭)以来、約21年7カ月ぶりの大きさで、歴代6番目の上げ幅だそうです。こういう状況を目の当たりにすると、いつも思いだすのが敗者のゲームの中に出てくる「稲妻が光る瞬間」という言葉です。著者のチャールズ・エリス氏は過去72年間のうちベストの5日を逃すと、利益は半減すると指摘しています。たしかに、どうも株価というのは下げるときはダラダラと下がり、上がるときは一瞬で上がるケースが多いように感じる(あくまで個人的な印象ですが)。このあたりにタイミング投資の難しさがあるのでしょう。やはり「稲妻の光る瞬間」を逃さないためには、市場に居続けることが重要になると改めて感じます。




長期投資やインデックス投資に関する基本文献といえば、ウォール街のランダム・ウォーカー敗者のゲームが二大名著とされているわけですが、個人的には『敗者のゲーム』の方が好みです。私も最近知ったのですが、どうも『敗者のゲーム』の原著第1版が登場したときは、おもに年金基金など機関投資家の運用責任者向けの本として読まれていたそうです。そういう意味で、ちょっとプロ仕様の内容になっているわけです。そんな中で、とくに好きなのが「稲妻の光る瞬間」という言葉でした。(ちなみに、もうひとつ好きなのは「ドリームチームを雇う」という考え方です。意味は本を読んでください。)

もちろん、バイ&ホールドでリスクが減るわけではありません。たしかに株価の上昇は「稲妻の光る瞬間」のごとくですが、逆に大暴落という“雪崩が起こる瞬間”もあるからです。そういう意味で、バイ&ホールドによるリスクとリターンの関係はイーブン。いちばんダメなパターンが、すでに雪崩に巻き込まれてしまったのに、「一時撤退」などといってポジションを解消してしまうことです。それで「稲妻が光る瞬間」を逃してしまっては目も当てられない。個人投資家なら自分の投資方針の一貫性の無さを嘆くだけで済みますが、いやしくも手数料を取っている機関投資家の場合、受益者に申し訳が立ちません。『敗者のゲーム』には、そういった厳しい姿勢が含まれているような気がします。

いずれにしても短期的な相場変動に惑わされて、ポジションを変化させることの難しさがよくわかります。そして、リスク許容度の範囲内での投資していれば一時的な損益を気にする必要のない個人投資家こそ、粘り強く「稲妻の光る瞬間」を待てるわけです。実際、今回の株価急騰で、それを実感した人も多かったのでは。私は、しっかりと実感しましたよ。

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