2015年8月12日

<購入・換金手数料なし>とeMAXISの異なる販売戦略を読み取る

久しぶりに低コストインデックスファンド分野で大きな動きがありました。ニッセイ・アセットマネジメントが<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)、三菱UFJ国際投信がeMAXIS債券バランス(2資産均等型)eMAXISバランス(4資産均等型)という新しいインデックス型バランスファンドを設定します。

<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型) 有価証券届出書(EDINET)
『eMAXIS債券バランス(2資産均等型)』『eMAXISバランス(4資産均等型)』募集・設定について(三菱UFJ国際投信)

なんだかインデックス型バランスファンド戦国時代といった感じです。とくに<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)は信託報酬が0.34%(税抜)という圧倒的な低コストで日本債券、日本株式、先進国債券、先進国株式に均等配分で投資できることから、注目を集めそうです。一方、eMAXISの2ファンドもユニーク。とくにeMAXIS債券バランスは日本債券と先進国債券(為替ヘッジ付)に均等配分で投資するというあまり例のないものです。このあたりにニッセイAMと三菱UFJ国際投信の戦略の違いがあるような気がします。

それぞれのファンドの詳細についてはリンク先を参照してもらうとして、やはり注目は<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)の信託報酬の安さでしょう。この分野は三井住友トラスト・アセットマネジメントの世界経済インデックスファンドSMTインデックスバランス・オープン、三菱UFJ国際投信のeMAXISバランス(8資産均等型)が有力な商品として先行していますが、資産配分がGDP比率の世界経済インデックスファンドとSMTインデックスバランス・オープン、均等配分のeMAXISバランス(8資産均等型)がいずれも信託報酬0.5%(税抜)であるのに対し、<購入・換金手数料なし>ニッセイ・ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)は0.34%(税抜)という圧倒的なコスト競争力を持ちます。そういう意味では先行する3ファンドに対してニッセイAMとして全面競争を挑んでいるといえます。

インデックスファンドはコストの多寡が運用成績差に直結しますから、<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)は極めて魅力的なファンドといえます。とくに債券と株式の均等配分が好きで、新興国への投資は好まない人からすれば、現状ではほぼ一択となるでしょう。逆に新興国債券・株式やREITへの投資が必要と考える人は、引き続き先行する3ファンドの方が魅力的です。(ただ、ニッセイAMが全面的にコスト競争を挑んできたわけですから、三井住友トラストAMや三菱UFJ国際投信は、真剣に信託報酬の引き下げを検討するべきでは。)

一方、eMAXISで新規設定される2ファンドには、ニッセイAMとはやや異なる三菱UFJ国際投信の戦略があるのでは。それをeMAXIS債券バランス(2資産均等型)から感じます。日本債券と先進国債券(為替ヘッジ付)に均等配分するというコンセプトは、極めてリスク抑制的な設計です。現在、低コストインデックスファンドシリーズの主要販路であるネット証券はある程度のリスクを負いながら長期運用を目指す資産形成世代の利用が中心ですから、こんな低リスクで分散効果も少ない商品が売れるはずがありません。だとするならば、いったいどこで売るつもりなのか。それはズバリ、地方銀行だと思います。いずれ販売会社を地方銀行に広げ、地方のリタイア層やシニア層をターゲットにすれば、これはこれで面白い商品ではないでしょうか。

実際にシニア層の中には多額の退職金をもらいながら、投資経験がほとんどない人が少なくありません。こうした層に投資信託を薦める場合、eMAXIS債券バランス(2資産均等型)はなかなか面白い商品ではないでしょうか。ヘッジ付にすることで為替リスクを抑えながら、少しだけ国際分散投資の雰囲気を味わえるわけですから、なかなか上手い設計に思えてきました。そして、購入者が投資信託に慣れてくれば、もう少しリスクをとってeMAXISシリーズの各ファンドを薦めることもできるでしょう。もっとも簡単なのはeMAXISバランスを薦めることです。ただ、シニア層は資産形成世代と比べて運用期間が短くなりますから、新興国に投資するのはリスク過多になる恐れもある。そこで新興国への投資を除外したeMAXISバランス(4資産均等型)を設定したと考えれば平仄が合います。

現在、eMAXISシリーズは重点販路としてネット証券のほか地方銀行をターゲットとしています。実際に、すでに多くの地方銀行で販売が進められており、地方銀行のラップ口座での活用も進んでいるようです。
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しかも三菱UFJ国際投信は、今年になって三菱UFJ投信と国際投信が合併して発足しました。eMAXISを設定・運用していた三菱UFJ投信と比べて国際投信は地方銀行に強固な販売網を持っています。合併のシナジーを発揮させるという面でも、eMAXISシリーズを地方銀行で重点販売するという戦略は理にかなうでしょう。

これまで銀行など販売会社と投信会社は、シニア層に対して高コストな毎月分配型投信などを回転売買させて、利益を確保してきました。こうした傾向は奇怪な三階建て・四階建て投信の登場で猖獗を極めたといえます。しかし、金融庁がフィデューシャリー・デューティーの観点から監視の眼を強めており、不誠実な商品や回転売買はいずれ行き詰る可能性が高まっています。金融機関もバカではありませんから、そういった大きな流れを理解しているはず。そうすると、やはりまっとうな商品で勝負しようという機運が金融機関内の一部にでも現われるのは自然なことでしょう。投資経験が浅く、とくだん自分で研究しようとする意思もなく、それでも老後の生活のために若干なりとも投資が必要なリタイヤ・シニア層に対して投資信託を販売する場合、妙な毎月分配型投信を薦めるよりも、eMAXIS債券バランス(2資産均等型)やeMAXISバランス(4資産均等型)を薦める方が、金融機関としてはよほど誠実な態度です。

このような観点から見れば、<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)に対してeMAXISバランス(4資産均等型)がコスト面で劣後していたとして、まったく対抗できないわけではありません。なにしろ<購入・換金手数料なし>シリーズは、ほとんど地方銀行で販売されていません。ターゲットとする販路がまったく異なる可能性があるのです。

あくまで低コストインデックスファンドの主戦場であるネット証券で全面競争を挑むニッセイAMに対して、三菱UFJ国際投信の販売戦略はもう少し複雑だといえます。今回の新ファンド設定という動きからは、そういった両社の異なる販売戦略を読み取ることも可能なのではないでしょうか。
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