2015年8月13日

人民元の切り下げをどう見るか

中国当局が3日連続で人民元の対ドル交換レートを切り下げたことで、世界経済にやや混乱が出ています。通貨の切り下げというのは輸出産業を中心に景気テコ入れ効果が大きいですから、やはり中国の実体経済は想像以上に悪いと見ていいのでしょう。通貨の下落というのは新興国ではよくあることなので、それ自体はそれほど気にすることはないとは思うのですが、やや気になる点がひとつ。それは人民元の価値下落は中国発の信用不安につながらないかということです。

民元は米ドルに対して一定範囲内での為替変動しか認めない変則的な為替管理制度が導入されており、事実上のドルペック制となっています。ここ数年、米ドルの独歩高が続いたことで人民元も上昇を続けていたわけです。しかし、米国の利上げがまじかに迫るという観測が強まる中、さらなる米ドル高になれば、人民元は一段高となってしまいます。それは現在の中国の実体経済にそぐわないという判断が中国当局にあったのでしょう。そうだとすれば米国の利上げ前であるこのタイミングは、人民元切り下げのよい機会だったのかもしれません。このあたりの事情をマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストが解説しています。

なぜ中国は人民元を切り下げたのか? 識者はこう見る(ZUU online)

広木さんの以下のような結論は非常に納得のできるものです。
個人投資家は不安視することはない。為替だけでインバウンド消費や日本の輸出競争力に大きな影響が出るわけではない。投資を考える上ではあくまでファンダメンタルズを見るべきなのだ。
しばらくは世界経済もバタつくでしょうが、あまり慌てて動くべきではないということです。

ただ、一方で今回の人民元切り下げが単なる為替問題に終わらず、中国の信用不安問題につながるとの指摘もあります。ポイントは、中国企業が持つドル建て債務の存在です。この問題を指摘しているのが広瀬隆雄さんです。

中国の人民元切下げが世界の資本市場に激震を与える理由
いま中国で起きていることは突き詰めて言えば「山一破綻」のようなバランスシートの問題
(Market Hack)

確かにドル建て債務を持つ中国企業にとっては、今回の人民元切り下げは大きなインパクトです。なにしろこの3日間で債務額が人民元換算で元利ともに4%以上増えたわけですから。なにより貸し手の方の不安が大きくなります。それが追加融資や借り換えを阻害するようになると、それこそ広瀬さんが指摘するミンスキー・モーメントに突入します。そして広瀬さんの以下の指摘は個人投資家も頭の片隅に入れておいた方がいいでしょう。
借金に絡んだ調整は、普通、長引きます。つまり「旦那、この問題は、時間かかりますぜ」ということ。
だから(あと何日すれば、事態が好転するか?)というように指折り数えて中国が出直る瞬間を待つのは、愚かなことだということです。
(もっとも日本でバブルが弾けた1990年から1991年にかけては、そういう底入れの瞬間を今かイマかと待ち続けた、さむい投資家がいっぱい居ましたが。)
やはりしばらくの間、世界経済はバタつくことになりそうです。だとすると、私たち個人投資家はどのようにふるまうべきでしょうか。やはり答えはひとつです。とにかく市場から退場しないようにすること。つまり、こんなときだからこそ自分のリスク許容度をしっかりと把握して、過剰投資にならないように気を付けるしかありません。それができれば相場の低迷が長引いても長期的視点では絶好の買い場になる可能性があるともいえるのです。
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