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2015年7月20日

『No.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方』-一般庶民の個人投資家は、このレベルの知識があれば十分だ



主観を排して定期的に一定額を投資する積立投資と異なり、個別株投資はある程度のタイミングを計る必要があります。基本は「安ければ買う」ということになるのですが、問題はその銘柄の株価が安いかどうか。普通の一般庶民にとって、この見極めが非常に難しいのです。しかし、投資指標に対する最低限の知識があれば、ある程度は株価が割高なのか割安なのかの目星はつけることができます。そうした投資指標について基本的な知識を得たり、確認するのに最近出た吉野貴晶氏のNo.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方は簡便で便利な本です。厳密な数学的論証がないという不満を指摘する人もいますが、私のような一般庶民の個人投資家なら、このレベルの知識で十分だと思います。

市場の非効率による価格変動から利ザヤを抜く短期売買と異なり、個別株による長期投資は「安ければ買う」という姿勢が非常に重要。だからバリュエーション分析は極めて大切になります。本書ではバリュエーションの目安となる投資指標を分かりやすく説明していくれています。とくに複数の指標を組み合わせて株価の割高・割安性、そして安全性を測ることを強調していることが親切。これは非常に重要なことですが、世の中には割安銘柄のように見えて、そのままさらに価値が磨滅していくボロ株というものがあります。割安株とボロ株を見分けるためには、複合的な視点が必要ですから、複数の指標を用いて株価の意味するところを立体的にとらえることが欠かせません。

また、著者は投資期間の設定の重要性を強調しています。短期(1年未満)、中期(1~3年未満)、長期(3~7年未満)、超長期(7年以上)という4つの投資期間を設定しており、超長期投資ならPBR、中期投資ならPERに着目した銘柄選択が有効だとします。なかでも超長期投資では低PBR銘柄への投資は極めて有効であり、低PBR銘柄を選択する手順として「PBRが0.8倍以下」「自己資本比率は業種内で2割未満を除く」「予想経常利益がプラス」「配当利回りが高い(2%以上)」という具体的基準を示しています。たしかにこれだけでかなりの割安銘柄を探せるでしょう。そうやって見つけた割安銘柄の中から気に入った企業を見つければ、かなり安心して投資ができます。

低PBR投資というのは、じつに単純な戦略ですが、こういった単純すぎる戦略にこそ収益の源泉があるという著者の指摘も参考になります。はっきりいって本業も家庭もある個人投資家は、投資に時間も労力もかけられません。だから投資戦略はできるだけ単純な方がいいわけです。すると、単純な投資戦略がもっとも有効な長期投資こそ個人投資家が選択すべき戦略だということが理解できます。

ちなみに、短期投資では足元の景気状況を見ながら適切な指標を選択すべしとしています。著者は証券会社のアナリストなので一応、ひとつの章をまるまる割いて短期投資での指標の使い方を説明していますが、このあたりは話半分ぐらいに聞いておけばいいでしょう。なぜなら、使用すべき指標の選択の基準となる景気判断が普通の人にはできないからです。

本格的にバリュー投資を行うなら、企業価値測定をもっと数学的に厳密にする必要があるという意見もあります。しかし、そんなことに時間を割いていては私たちのような個人投資家は“本業”に差し障りが出ますし、生活の質も低下するに違いありません。それは本末転倒です。余裕資金を使って超長期保有を前提に株式を購入するなら、本書で解説されているレベルの内容を理解し、活用するだけで十分ではないでしょうか。そういう意味で、個別株投資の入門書・参考書として非常に良い本だと思いました。

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