2015年5月28日

『積立投資のすべて』-積立投資法研究の決定版



一般庶民である個人投資家にとって、毎月コツコツと定額投資する積立投資法は、もっとも心理的負担の少ない方法だといわれています。しかし、積立投資法はすべて万能というわけではありません。では、どういったケースで積立投資が有効に作用するのか。様々なケースを例に徹底的に検証しているのが星野泰平氏による積立投資のすべて (現代の錬金術師シリーズ)です。いわば積立投資法研究の決定版ともいえる一冊。これから積立投資を実行しようかどうか迷っている人は、ぜひ一読をお薦めします。

定期的に一定額を積立投資する「ドルコスト平均法」は、一括投資による高値掴みのリスクを回避できる方法としてインデックス投資家の間でも常識的に利用されているわけですが、この本の優れている点は、なぜドルコスト平均法による投資が有効なのかを様々な具体的ケースを例にシミュレーションしてくれていることです。投資関連の書籍では机上の空論のようなシミュレーションが横行しているので、この本のように徹底して具体的なデータを基にした検証は極めて貴重です。

さらに、ドルコスト平均法が万能ではなく、デメリットもあることを明確に指摘していることも本書のポイントです。例えば投資効率という点では明らかに積立投資法は非効率だと明確に指摘しています。それはそうで、実際に一本調子に上昇が続くような市場環境では、一括投資の方が圧倒的にリターンも良くなる。また、長く上昇局面が続いた後に大きく下落する相場では、積立投資の方が損失は大きくなります。そういう積立投資法のメリット・デメリットをふまえた中立的な視点を失っていないからこそ、かえって著者が強調する積立投資法の利点が明瞭に理解できるともいえます。そういったことも含めて、積立投資に関心のある人は、一読しておくべき本でしょう。

さて、以下は個人的見解です。

積立投資法にはメリットもデメリットもあるわけですが、現実問題として一般庶民の個人投資家は積立投資法を選択せざるを得ない。なぜかというと、一括投資するようなまとまった資金を用意することは一般庶民にとって簡単ではないからです。積立投資なら、日々の収入の中から少額づつでも投資を実行できる。これは非常に大きなメリットです。また、一括投資のために資金を貯めたとして、貯まったときが投資にとって最適なタイミングなのかも庶民にはわからない場合がほとんど。高値掴みを恐れて、結局は買い場を失ってしまうというケースが少なくありません。いつまでたっても実際の投資が実行できないのでは、投資効率も所詮は画に描いた餅です。

当然ですが個人投資家にとって投資は仕事ではありません。あくまで本業の合間に行うものですから、できるだけ負担の少ない方法を採用することが大切。本業に差し障るようでは、本末転倒です。個人投資家はプロ投資家とは違うのですから、それほど投資効率にこだわる必要はないというのが私の考えです。投資効率にこだわりながら、いつ投資を実行しようかとジリジリしているようでは、そこに必ず生活上の無理が生じる。そんな無理をするぐらいなら投資なんかする必要はないのです。

こういったことをふまえると、いろいろとデメリットがあったとしても、やはり積立投資法というのは個人投資家にとってもっとも適した投資方法だといえるでしょう。だからこそ、いつの時代も積立投資法は、資産形成の王道とされてきたのです。

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