2015年2月20日

組合活動も一種の投資活動

労働組合に参加しているサラリーマンにとって2月、3月は大事な時期です。そう、春闘の時期だからです。この結果によって今年4月からの給料が決まるわけですから、極めて重大な意味を持ちます。私は、あらゆる経済活動は投資だと考えているので、1年間の人的資本の“価格”を決定する春闘や組合活動こそ、もっとも重要な投資活動だと考えています。

私は従業員50人以下の中小零細企業に勤めていますが、幸運なことに会社に労働組合があります。しかも、ユニオンショップなので、役員と一部幹部社員以外はすべて組合員です。なぜこんな小さな会社がしっかりとした労働組合を持っているのか不思議なのですが、どうも日本共産党の関係者で後に中国共産党との接近を理由に党を除名された人物が会社設立の仕掛け人だったことが関係しているようです(このため創業当初は、社員のほとんどが日本共産党の党員だったとか)。

現在では日本共産党との関係はほとんどなくなりましたが(ただ、取締役の1人が現在でも党員資格を持っているという噂はあります)、伝統的にリベラルな社風が強く、前社長は学生時代に安保闘争のデモで逮捕歴があることを酒の席で自慢げに語りだすような人でした。そんなわけで、中小零細企業のわりには労組の力が強い会社です。

そんな職場で私は3年前から労組の執行委員長をやっているのですが、執行部方針は毎年“経済闘争重視”です。労働者は、自分の「労働力商品」を「企業=資本家」に売り、その対価として「賃金」を得ています。ですから、少しでも商品を高く売りつけようとするのは当然のことです。これは投資と同じ。「働く」ということは、金銭の代わりに労働力商品を経済活動(サラリーマンなら自分が勤める会社の事業、自営業なら自分の事業)に投じ、そのリターンを金銭という形で受け取るわけですから。

問題は、労働力商品を投資するという場合、これはパッシブな姿勢では上手くいかないということ。通常の投資なら投資効率の良い投資対象を見つけてパッシブ運用した方がリターンが大きくなるケースが多いのですが、労働の場合はリターンを最大化するために投資効率自体を自分で高める努力が必要になります。自営業なら自分の労働生産性を上げることで投資効率は高まります。しかしサラリーマンの場合、労働生産性を上げてもその剰余分を会社が労働者に分配するインセンティブが働きません。企業には収益の最大化という別の目的があるからです。そこで重要なのが組合活動などで労働分配率を高める活動です。その意味で、ものすごくアクティブな姿勢が求められるわけです。

いわずもがなですが、サラリーマンにとって資産形成の最大のエンジンは毎月の給料です。だったら給料を増やすための努力は、どんなことでもやるべき。私が組合活動を重視している理由です。また、経営者が労組ときちんと向き合えている企業は適正な労働分配がなされているケースが多いわけですから、労働者の間に自分の労働生産性を高めようというインセンティブが働きます。自分の労働生産性が高まれば、労働という投資活動の投資効率も高まり、リターンも大きくなるわけですから当然のことです。これは企業にとっても本来はありがたいことのはず。

以前、ある大企業の社長さんと話をする機会があったのですが、その社長さんは「労組が経営の邪魔になると考えているうちは、その経営者は3流」と断言していました。いわく「労組というのは鏡に映った経営者の姿だよ。滅茶苦茶な労組が存在する会社は、じつは経営者が滅茶苦茶なんだ」。なるほどと思いましたね。

そういうわけで、今年も春闘を頑張ります。もちろん、単純に「給料を上げろ」というだけでは交渉とはいえません。自分の労働力商品を高く売るためには、それはどれほどの価値があるかを具体的に提示しなければならないのです。そういうマーケティング的な観点も組合運動には必要だということを最近強く感じるようになりました。

いずれにしても、「労働」という投資活動には“ほったらかし”は通用しないことだけは確かです。

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