年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2025年度第2四半期(7~9月)運用状況が発表されたので定例ウオッチです。期間収益率は+5.52%、帳簿上の運用損益は+14兆4477億円でした。市場運用開始来の収益率は年率+4.51%となり、運用資産額は277兆6147億円となりました。
2025年度第2四半期運用状況(速報)(GPIF)
好調な株式市場を反映し、大幅なプラスリターンとなっています。運用資産総額も過去最高を更新しました。当たり前の話ですが、やはり株価上昇というのは、まずは喜ぶべきことなのです。
7~9月は、日銀による追加利上げの見方が強まったことで長期金利が上昇し、国内債券の価格は下落したのですが、株式市場はAI関連を中心にハイテク銘柄が市場を牽引し、国内株式と外国株式がともに大幅に上昇しました。また、日米金利差は縮小しているのですが、依然として円安傾向が続いていることで外国株式や外国債券の円換算価格も上昇しています。このため国内株式の騰落率は-1.36%でしたが、国内株式が+11.02%、外国株式が+9.75%とポートフォリオを牽引しています。外国債券も+2.96%となり、収益を下支え亜しました。
さて、現在も株価の好調が続いているのですが、なぜか日本では株価が上昇すると、それをクサす人が出てきます。典型的なのが「株価が上昇しても、庶民の生活には関係ない」「株を持っている一部の人が設けているだけ」といったコメントです。しかし、こうした意見はGPIFの存在を踏まえると、非常に浅い考えだということになります。株価が上昇すれば、それによって公的年金の基盤が強化されるのですから。だから、株価上昇というのは(もちろん現実には様々な課題があるとしても)、まずは喜ぶべきことなのです。
こういう素直な考え方が、なかなか普及しないところに日本の悲しみがあります。やはりバブル崩壊以降の長引く株価低迷で、日本人の株式市場に対する認識が極めて特異なものになってしまったのでしょう。ちなみに米国などは非常に素直で、株価が下落すると政府への支持率が低下します。なので米国はどの党が政権に就いても、株価の維持・上昇のための政策を心掛けている。つまり、日本のように“トンデモ経済政策”を掲げる政治家が影響力を持つことは難しい。トランプ大統領でさえ、マクロ経済政策は無茶苦茶ですが、(だからこそか)株式市場に対して有利な政策や規制緩和をちょこちょこと出しているわけで、それによってもたらされた米国株の上昇が、政権支持率を下支えしている面が少なからずあります。
日本の場合、公的年金制度は賦課方式なので基本的に年金給付=保険料収入+国庫負担です。そして少子高齢化によって徐々に保険料収入+国庫負担では年金給付に不足するようになる。そこで不足が本格化する2030年代中頃から年金積立金を徐々に取り崩し、概ね100年後には給付額の1年相当額を残るように計算されています。つまり、GPIFの運用というのは、将来世代(つまり現在の現役世代の子供たち)の保険料負担がこれ以上重くならないように、そして、現役世代の将来の年金給付を急激に減らさないようにするためです。そう考えれば、やはり株価上昇してGPIFの運用資産が増加することは、まずは喜ぶべきことに他ならないでしょう。
