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2024年7月3日

英国は賢い―ESGと防衛産業

 

近年、投資判断の基準にESG(環境、社会、ガバナンス)を組み込む考え方が強まりました。この時に話題になるのが防衛産業の取り扱いです。はたして防衛産業はESGに当てはまるのか。この問題に対して英国の財務省と投資協会が「経営が順調で優良かつ高品質な製品を供給している防衛産業への投資は、ESGにおいて考慮すべき事項と両立するものである」との声明を発表したそうです。あいかわらず英国は賢いと思いました。

英国財務省と投資協会の声明に関しては、ニッセイ基礎研究所が簡便にまとめた記事を載せています。


記事にあるように、英国国防大臣は次のように主張しています。
英国政府は、ESGの原則と防衛産業の間にはなんの矛盾もない、と主張する。核抑止力を含む強力な国防があってこそ、われわれが「あって当然」のように思い込みがちな自由を確保することができるし、投資家や金融サービス会社がESGを考慮しようとする大前提が防衛産業の充実である。
また、英国財務省と投資協会の共同声明は、防衛産業に投資することの代表的な効能として以下を挙げています。
・国家安全保障に貢献し、全国民が享受できる市民的自由を守ることに貢献できること
・それと同時に、年金基金や個人投資家に、長期的な利益をもたらすこと
そもそも、なぜ投資にESG原則が重要になったのか。それはESGに悪影響を及ぼす企業活動は、長期的にはマーケットの持続性と成長を毀損すると考えるからです。ここで重要なのは、ESG原則はあくまで「市場の持続性と成長」が目的であり、決して「反・市場」「反・成長」の考え方ではないことです。

そう考えると、英国政府と投資協会の考え方は非常にクリア。要するに安全保障体制が不安定化すれば、市場の持続性も成長もあり得ないわけですから、防衛産業こそESGを重視する投資活動の前提条件を守るために存在しているというわけです。きれいごとに流されず、現実を直視しながら穏健で堅実な判断をする英国は、あいかわらず賢いなと思います。まさに大人の賢さだと感心しました。

こうした英国の大人の賢さを見ると、ときおり日本で起こる防衛産業へのバッシングがなんとも幼稚に見えてきます。最近でも有名な左派系新聞記者が三菱重工を武器製造企業だと批判し、SNSで三菱製品のボイコットを呼びかけていましたが、その記者が所属する新聞社は三菱重工製の輪転機を使っていたというオチがありました。おまけに三菱重工が輪転機の製造から撤退するというニュースが流れ、見事な二段オチに。ここまでくると滑稽を通り越して、無知というのは哀れなものだと感じたのでした。

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