2023年3月12日

金利上昇の影響大きく―「世界経済インデックスファンド」の第14期運用報告書を読む

 

積立投資のコア商品のひとつとして愛用している「世界経済インデックスファンド」の第14期(2022年1月21日~2023年1月20日)運用報告書が出ました。第14期は、世界的なインフレ高進と、それを抑えるために各国中央政府が金利引き上げに動いた提供が大きく出た結果となりました。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの「世界経済インデックスファンド」は、1本で世界の株式と債券に50:50の比率で投資できるバランス型インデックスファンドです。株式と債券はそれぞれ先進国と新興国のGDP比率を参考に配分され、新興国も含めた"世界経済全体の成長"を享受することを狙うコンセプトが非常に面白く、根強いファンがいます。私自身も積立投資のコア商品としてかなりの金額を保有しています。

第14期運用報告書によると、当期の騰落率は-1.4%、分配金は見送りとなりました。前期の素晴らしいパフォーマンスから一転して、マイナスリターンで終わりました。このファンドはポートフォリオに含まれる各資産カテゴリーの騰落率を見ることで、その期の運用環境がよく分かります。マザーファンドベースのアセットクラスごとの騰落率は以下のようになっています。

国内債券インデックス  -4.6%
国内株式インデックス  +2.1%
先進国債券インデックス -2.0%
先進国株式インデックス -0.5%
新興国債券インデックス +3.4%
新興国株式インデックス -4.0%

国内株式と新興国債券以外は軒並みマイナスリターンとなっています。とくに国内外とも債券カテゴリーの下落が大きい。世界的なインフレ高進とそれを抑えるために各国中央銀行が金利引き上げに動いたことで債券価格が下落した影響が非常に大きかったことが分かります。また、金利上昇は株式市場にもネガティブに働いており、とくに新興国株式が大きな打撃を受けました。逆に日本株式は健闘しています。円安効果です。

期末段階での純資産座高は1651億円(前期末は1285億円)となり、引き続き堅調な資金流入が続いています。超低コストファンドが一般化した現在でもコンセプト的に類似ファンドが少ないことから、根強い人気があることをうかがわせます。費用明細上の実質コストについても確認しておきます。以下のようになりました。

信託報酬 0.55%
売買委託手数料 0.004%
有価証券取引税 0.003%
その他(保管、監査)費用 0.064%
実質コスト合計 0.621%

前期の実質コストが0.61%でしたから、若干増加したものの、ほぼ横ばいと見ていいでしょう。最近は低コストなインデックスファンドが増えたことでやや割高感がありますが、類似の資産配分コンセプトのファンドがあまりないことを考えると、これでも比較的低廉なレベルにあるとも言っていいでしょう。

2022年は債券を多く組み入れたバランスファンドにとって厳しい市場環境でしたが、これから組み入れられていく債券の利回りは非常に高くなっているので、債券投資の環境自体は良くなっており、債券と株式を組み合わせるバランスファンドの効果が発揮しやすい市場環境が回復しつつあると言えるでしょう。その意味で、「世界経済インデックスファンド」の魅力は失われていません。今後も引き続き安心して保有できそうです。

とはいえ、超低コストインデクスファンドの普及で、「世界経済インデックスファンド」の信託報酬の割高感は一段と強まっています。大手運用会社が既存ファンドの信託報酬を見直し、引き下げる動きが出ています。三井住友トラストAMもぜひこの動きに加わってもらいたい。信託報酬をもう少し下げることができれば、「世界経済インデックスファンド」は三井住友トラストAMの看板ファンドになるポテンシャルを秘めていると思うだけに、非常にもったいないのです。

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