2022年8月4日

日本株は144年間で584万倍に上昇―明治大学株価指数研究所が「三和・岡本日本株価指数」を開発

 

明治大学の株価指数研究所がこのほど、日本で株式市場が誕生した1878年(明治11年)を起点とする株価指数「三和・岡本日本株指数」を開発しました。


この指数によると、日本株は配当再投資効果も含めると144年間でなんと584万倍に上昇していることが分かりました。これは画期的な調査・研究です。株価が長期に渡ってどれだけ驚異的な成長を遂げるのかという実例を日本株でも具体的に例示することになるからです。

日本の株式市場は1878年に渋沢栄一らが設立した東京株式取引所に遡ることができます。ただ、市場発足時から現在までを連続して比較できる株価指数は存在しませんでした。そこで明治大学商学部の三和裕美子教授とI-Oウェルス・アドバイザーズの岡本和久社長らが産学協同研究として新しい指数の開発に取り組んでいました。そして開発されたのが「三和・岡本日本株指数」です。日本経済新聞に解説記事が載っています。


明治大学のニュースリリースや日経新聞の記事にあるように、戦前部分は当時の株式先物取引である定期取引(長期清算取引)に上場していた約500社で指数を構成しました。そこには日本郵船や倉敷絹織(現・クラレ)などが含まれています(ちなみに私は日本郵船とクラレの両方の株を持っているので、ちょっと感慨深いです)。また、営業報告書や取引所の資料、経済年鑑、新聞記事などを活用して各社の株価や資本金、配当金、資本異動などのデータベースを構築し、戦前期特有の金融制度や増資・権利落ちなども考慮した配当込み指数を算出しました。

この指数を基に、1952年以降は日本証券経済研究所が算出する株式投資収益率に、73年からは配当込みTOPIXと連続性を持たせることに成功したわけです。はっきり言って、これはとてつもない学問的業績です。こういう地味だけれども手間暇がかかり、だれも手を付けられなかった調査・分析こそが、真の“学術研究”です。

そして、「三和・岡本日本株指数」を通じて、日本株の驚異的な成長の姿が初めて具体的に示されました。この144年間に日本株を取り巻く環境は日清・日露戦争、関東大震災、昭和恐慌、第二次世界大戦、そして敗戦など未曽有の危機が何度もありました。それでもトータルリターンは584万倍というのは、恐るべき数字です。米国株には1880年代からの株価指数チャートが存在し、それをもって米国株の驚異的な成長が例示されることが多いのですが、同じことが日本株にも当てはまることが実証されたわけです。改めて株式の驚異的なパワーを感じます。

日経新聞の記事には「長期投資の有効さを示す結果だ」という研究者の声が紹介されていますが、まさにその通りです。株式の長期保有、それも相続などで世代を超えて長期保有した場合のリターンは、驚くべき数字となる可能性があるのです。それは戦争や天災すらも乗り越えて成長していく姿です。これこそ株式投資の可能性というものではありませんか。こうした姿を具体的に見れば、それこそ“たかだか30年”の短期的な株価推移だけを見て「日本株オワコン論」を唱えるのは、いかにも浅い考えだということが分かります。

今回、画期的な業績を上げた明治大学株価指数研究所には、さらなる調査・研究の成果を期待したいところです。例えば今回開発した「三和・岡本日本株指数」は、インフレ率や1946年の新円切り替えの影響などは考慮されていません。ぜひ今後はインフレ調整後の騰落率なども算出して欲しい。そうすれば、日本株成長のよりリアルな姿が見えてくることになるでしょう。頑張って欲しいと思います。

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