モーニングスターに面白い記事が載っていました。
投資家の「実際の儲け」を示す「インベスターリターン」、積立投資の広がりを示唆(モーニングスター)
投資家の「実際の儲け」の指標であるインベスターリターンを見ると、パッシブファンドとアクティブファンドで大きな差が出ているそうです。要因は積立投資にあるというのがモーニングスターの見立てです。だとすると、やはり積立投資の威力はなかなか侮れないと改めて感じました。
記事でも説明されているように、「インベスターリターン」は投資家がファンドの売買によって実際に得た平均的なリターンを表す指標です。資金の出入りが考慮されているため、安値買いや高値売りの投資家が多い場合には高くなり、高値掴みや安値売りの投資家が多い場合には低くなります。
このためインベスターリターンを、ファンドのパフォーマンスの指標である「トータルリターン」と比較することで、そのファンドに資金を入れている投資家の投資タイミングの良し悪しがある程度わかることになります。
今回の分析では、17カテゴリーで過去3年、5年、10年それぞれのアクティブファンドとパッシブファンドの「インベスターギャップ」(「インベスターリターン」-「トータルリターン」)を比較しているのですが、この結果が非常に面白い。次のようになりました。
インベスターギャップの「パッシブ平均-アクティブ平均差」を見ると、過去3年間では17カテゴリーのうち16カテゴリーでプラス、5年間では15カテゴリーでプラスとなった。残高の大きな一部カテゴリーにおいてではあるが、過去3年間、5年間ではアクティブファンドよりもパッシブファンドの方が、投資家が良いタイミングで投資し、実際の儲けを実感できていると言える。一方、過去10年間で「パッシブ平均-アクティブ平均差」がプラスとなったのは、16カテゴリー(過去10年間で該当するパッシブのない「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」を除く)のうち8カテゴリーに留まった。
過去5年まではパッシブファンド平均が圧倒的に アクティブファンド平均を上回っているということは、パッシブファンドを購入している投資家の方が投資タイミングの面でも良好だったことになります。この要因に関して、過去10年のデータはで、まだそれほど差が開いていないことから、モーニングスターでは次のように分析しています。
過去3年間、5年間、10年間の違いの背景には、投資家の間でこの数年の間に、パッシブファンドへの積立投資の意識が広がっていることがあると見られる。アクティブファンドへの投資においては、これまで通りのタイミング投資による高値掴みの傾向が残っているのに対し、パッシブファンドへの投資においては、毎月一定額積み立てることで、自ずと投資期間が長期化し、高値掴みを避けて安値でより多くの口数を購入することにより、トータルリターンを上回るリターンを享受している投資家が増えていると考えられる。
これがどこまで正しいのかは断定できませんが、ある程度の説得力はあります。やはり積立投資の効果は無視できないと考えてよさそう。
その上でもう一つ注目したいのがインベスターギャップの中身です。記事に併載されている表を見ると、インベスターギャップのアクティブファンド平均の多くがマイナスになっているの対して、パッシブファンド平均はほとんどがプラスです。つまり、アクティブファンドを購入している人の多くはトータルリターンすらも確保できなかったということです。
日本でアクティブファンドを購入する人は、総じて投資タイミングが悪く、高値掴みの安値売りをしがちということ。これは、ある資産カテゴリーが高騰するとそこに投資することがブームになり、逆に下落するとブームが終焉してファンドが売られるという日本のアクティブファンドにおける毎度の光景からも容易に想像できます。
儲けようと思っていろいろなファンドを乗り換えていると、結局はトータルリターンすらも下回るインベスターリターンしか得ることができないというのは、じつに皮肉な現象です。そして、その間に積立投資家は淡々と積立を続けているだけでトータルリターンさえも上回るインベスターリターンを得る可能性がある。これこそ積立投資の侮りがたい威力だと言えるでしょう。