2022年4月14日

『西洋美術の歴史』―スタンダードな西洋美術史の教科書を読み直す


遠い親戚に芸術院会員の西洋画家がいたこともあってか、私は以前から日本人が描いた西洋画に非常に関心がありました。大学院生時代には明治時代の美術論争に関する論文もいくつか書いたことがあります。最近、どういうわけか美術史研究熱が再燃し、再読も含めて美術史の本ばかり読んでいます。今回紹介するH.W.ジャンソン 、アンソニー・F.ジャンソン『西洋美術の歴史』もその1冊。西洋美術史を勉強している人なら、必ず読んでいると言われるスタンダードな教科書です。

今回、この本を改めて読み直そうと思ったのは、西洋美術史の基礎をもう一度復習しようと考えたからでした。私がとくに関心を持っているのは明治時代に日本人が描いた西洋画の問題なのですが、やはり考察の前提として西洋美術史のグランドセオリーを再確認しておきたかったからです。

そういうときはスタンダードな教科書を読むのがいちばん効果的です。本書は、その代表的な1冊。米国の大学で西洋美術史の科目を選択すると、だいたい本書が教科書として使われるそうです。実際に1冊で古代文明の美術から現代アートまで網羅されており、じつに便利。

しかも、単純に歴史と作品をカタログ的に紹介するのではなく、冒頭から「美術とは何か」「芸術と作品、鑑賞者の関係」といった本質的な問題に切り込んでいることが素晴らしい。入門書として概説に徹しながらも、決して薄味にしないところが米国の大学レベル教科書の立派なところです。おかげで西洋美術に関する知識がすっかりリカバリーされました。

社会人として日々の仕事や生活に追われていると、どうしても日常が単調になりがちです。そんな時に、学生時代のように美術や文学、思想などに関する本を読むのは本当に楽しい。なんだか気持ちも若返ります。美術史の研究を再開しながら、そんなことを改めて感じているのでした。

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