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2021年3月14日

「収入-消費=資産形成」から「収入-資産形成=消費」の時代へ

 

最近、若い世代の間でも将来に向けた資産形成に真面目に取り組む人が増えていると言われていますが、その傾向を裏付ける可能性のあるデータが出てきました。フィデリティ退職・投資教育研究所が毎年実施している「ビジネスパーソン1万人アンケート」によると、“資産運用派”が“節約派”を始めて上回ったそうです。なんとなく時代の変化を感じさせる結果です。

フィデリティによるアンケートでは、“退職後の生活のために資産を作ろうと考えた時、どんな方法で生活を改善しますか?”という問いに対して「1.生活を切り詰めて支出を抑える」「2.貯蓄や資産運用に回すお金をもっと増やす」「3.副業やアルバイトなどで収入を増やす」「4.定年後も働くことができるようにスキルアップを目指す」「5.改善すべき点はない」という5つの選択肢を挙げたところ、2020年は過去10年間で初めて「2.貯蓄や資産運用に回すお金をもっと増やす」が最多となったそうです。

節約より資産運用を選ぶ20-30代(フィデリティ退職・投資教育研究所)

こうした結果に対してフィデリティは家計における資産形成の立ち位置が変化している可能性を指摘しています。つまり、従来のように消費の後に残ったお金を貯蓄や投資に回すのではなく、あらかじめ収入から資産形成のために一定額を貯蓄や投資に回し、残ったお金で消費するという行動様式です。すなわち「収入-消費=資産形成」ではなく、「収入-資産形成=消費」の時代に入りつつあるということです。その具体的な方法として積立投資があるわけです。

実際に積立投資をしている立場からすると、たしかに「収入-資産形成=消費」というやり方は有効だと実感します。最初は可処分所得の減少でちょっとしんどいのですが、慣れてくると節約よりもストレスが明らかに少ないからです。なにしろ、天引きなどで資産形成にあらかじめ資金を回しておけば、手元に残ったお金はすべて使ってしまってもいいわけですから。おかげで積立投資を始めてからというもの、手元にあるお金でまかなえる範囲なら、欲しいものは躊躇なく買うようになりました。

そう考えると、「収入-資産形成=消費」という行動様式をとる人が多数派になるというのは、消費構造も含めて新しい時代の到来を予想させるものですからあるのかもしれません。ただ、やはりコラムの筆者が指摘するように「本当は先ほどの5つの選択肢の最初の4つをすべてやっておくことが大切ではないでしょうか」というのは、まったくその通りで、そこまでいけば資産形成も真の上級者ということになります。そういった人はまだ少数派ですが、そこ至る道を歩き出した人は多いのかもしれません。やはり時代は変わりつつあるのでしょう。

ちなみに「収入-資産形成=消費」という方法論の有効性を強烈に指摘した先人に、日比谷公園の設計者としても知られる農学者、本多静六博士がいます。その著書『私の財産告白 』は、資産形成とは何かということを一種の人生哲学にまで昇華させたところに異様な迫力があります。読んでおいて損のない1冊です。



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