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2021年2月14日

GPIFはきちんと“利益確定”している

 

世界的な株価上昇で年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用も堅調に推移しています。期間収益がマイナスになると大々的に報道されるのに、プラス収益だとあまり話題にならないという気の毒な境遇のGPIFですが、最近は少しづつですが冷静な報道も増えてきました。ところが期間収益がプラスになったという報道が出ると、ネットニュースのコメント欄で盛んに書き込まれるのは「早く利確(利益確定)しろ!」という声。あるいは「評価上の含み益があるだけでは無意味」といった言葉です。では、GPIFは利益確定をまったくしていないのでしょうか。そんなことはありません。定期的にきちんと“利益確定”しているのです。

GPIFの運用成績はホームページで公開されているので誰でも容易に確認することができます。そこで運用が好調だった2020年度の第1四半期から第3四半期まで(4~12月)を見ることで、実際にきちんと利益確定していることを確認します。


いずれの四半期も期間収益率はプラスでしたが、とくに大きく増加したのが国内株式と外国株式です。国内株式は第1四半期+10.95%、第2四半期+4.93%、第3四半期+11.27%のリターンとなりました。外国株式は第1四半期+19.99%、第2四半期+5.99%、第3四半期+11.88%とさらに大きく増加しています。一方、国内債券と外国債券はいずれの四半期も0~3%の伸びにとどまっています。

こうした結果を見ると、GPIFのポートフォリオは2020年4~12月で国内株式と外国株式が大きく増えているはずです。では実際にポートフォリオの資産配分はどのように推移しているか確認すると、次のようになりました。

【第1四半期】
国内債券26.33%、外国債券21.81%、国内株式24.37%、外国株式27.49%
【第2四半期】
国内債券26.61%、外国債券23.46%、国内株式24.06%、外国株式25.88%
【第3四半期】
国内債券23.64%、外国債券25.71%、国内株式25.28%、外国株式25.36%

それほど大きな変化がありません。それどころか、最も増加しているはずの外国株式にいたってはウエートが低下すらしています。なぜならGPIFは現在、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式の4資産をそれぞれ25%(資産によってそれぞれ±6~8%の調整枠あり)ずつ保有することを基本ポートフォリオとし、ある資産が大きく増加すればそれを売却して他の資産を購入し、ウエートを基本ポートフォリオの配分に近づける「リバランス」を実施しているからです。

これこそGPIFはきちんと“利益確定”している証拠です。ある資産(現在の場合は国内株式と外国株式)が大きく増加すれば、それを売却している。その売却益で別の資産を購入しているわけです。これを“利益確定”と言わずしてなんというのでしょうか。ちなみに、購入する別の資産は値下がりしているものも多いでしょうから、これは一種の“ナンピン買い”とも言えます。「リバランス」というのは、利益確定とナンピン買いを同時に行う行為と言えるでしょう。

こうしたことを考えると、GPIFの運用に対して「早く利確しろ!」と言うのは無意味なことでしょう。GPIFからすれば「いや、普通に利確してますけど…」と答えるしかないわけですから。

ちなみに「利益確定=現金化」という意味で言うならば、それは別の意味で年金運用に対する無知な発言です。なぜなら、そもそも年金基金のような巨額資金を現金で預かってくれる金融機関など存在しませんし、かりに存在したとしても、その金融機関自体の個別企業リスクが国内債券よりも大きくなってしまうからです。

なにより年金のような超長期運用において、現金は無リスク資産ではありません。なぜなら、インフレに対する脆弱性が極めて大きくなってしまうからです。このため基本的に年金基金には資産の大部分を現金で保有するという選択肢は存在しないのです。

もし極めてリスクを抑えた運用を行うなら、資産の大部分を国内債券で保有することになります。ところが現在、国内債券の利回りはマイナスです(=債券価格は高レベル)。満期まで保有してもマイナス利回り分の損失が出ますし、金利上昇局面になれば債券価格が暴落して大きな評価損を出すことになるでしょう。はたしてそういった資産に年金資金の大部分を投じることが“低リスク”なのでしょうか。

それと比べれば、現在のGPIFのように各資産をバランスよく保有し、リバランスによって利益確定とナンピン買いを小まめに行っている姿の方が、よほど“安心”です。そして、実際にこうした利益確定とナンピン買いの成果が、GPIFによる市場運用開始以降の累積収益額85兆3011億円(2020年12月末段階)として具現化しているのです。

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