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2020年3月30日
不安で夜も眠れないなら売りなさい。それがあなたのリスク選好の程度です
新型コロナウイルスの拡大が止まりません。欧州は本当にひどい状態になっていますが、いよいよ日本も東京や大阪など大都市を中心に感染者が増加の兆しを見せています。日本も欧州のようにロックダウン(都市封鎖)があってもおかしくなくなってきました。ロックダウンとなれば経済への大打撃は避けられず、相場の先行きもますます不透明となります。こんな先行きの見えない市場環境となると、投資初心者の中にはリスク資産の一部を売却して一時的にでもリスクから避難しようと考える人もいるでしょう。長期投資のセオリーからすれば、それはあまりお勧めできることではありません。しかし、本当に不安で夜も眠れないような状態なら、リスク資産の一部を売って安全資産に避難するのもありだと思います。なぜなら、もともとそれがあなたのリスク選好の程度だからです。
よく「投資はリスク許容度の範囲内でやるべきだ」と言われます。「リスク許容度(risk tolerance)」というのは「投資家の許容できるリスクの範囲」のことですが、ようするにどれだけ損をしても生活が破綻しないのかということです。この範囲内での投資であれば、大きな下落相場が来ても投資を続けることができるわけです。
ところが現実はもう少し複雑です。個人投資家が直面するのは「リスク許容度」だけではありません。もうひとつ大きな要素に「リスク選好」があるのです。「リスク選好(risk appetite/risk tolerance)」というのは「リターンを得るためにどれだけのリスクをとろうとするかという意欲」のことですから、多分に精神的な要素です。言い換えると「どれだけの損に(精神的に)耐えることができるか」ということになります。
リスク許容度が人によって異なるように、リスク選好も人ぞれぞれです。そして同じ人でもリスク許容度とリスク選好は一致しません。リスク許容度を超えて投資するべきではないのと同じように、リスク選好を超えて投資することも好ましいことではないでしょう。なぜなら、いざ損失が発生した時に、精神的な安定を失い、生活の質が低下するからです。投資などは生活の質を低下させてまでするものではないと思うのです。
そして、本当の「リスク許容度」というものは実際に下落相場を体験しないと実感できないのと同じく、本当の「リスク選好」も現在のような暴落を経験して初めて分かるものです。だから、現在の暴落相場で大きな含み損を抱え、それこそ夜も眠れないぐらいに不安に感じるなら、それは自分の「リスク選好」を超えて投資していたことに気付いたということです。
だとするなら、ここでリスク資産の一部を売却し、自分のリスク選好の範囲内まで投資ポジションを縮小するのも一つの選択でしょう。それは恥ずべきことではりません。リスク選好が高いからと言って別に自慢できることではないし、低いからと言って劣っているわけではありません。そもそもリスク許容度と同じく、リスク選好の範囲内で投資することが、投資を続ける秘訣ですから(もっとも、リスク選好は一種の慣れですから投資歴が長くなると高まる傾向があります)。
このように自分のリスク選好の範囲内まで投資ポジションを縮小することは、決して批判されるようなことではありません。ただし、一つだけ注意点があります。それは、投資ポジションを縮小したなら、それを常に維持することが大切ということです。かりに今後、相場が回復したとしても、そこで再びポジションを拡大してしまうのでは意味がありません。それをすると、再び大きな下落相場の直面した時にまたもやポジションを縮小するはめに陥る可能性が高い。それは過ちを繰り返すことであり、損失を拡大するすることにもなるでしょう。
結局、個人投資家の資産運用としての投資というのは、それこそ投資していることを忘れるぐらいの規模で行うことが継続の秘訣でしょう。それは「リスク許容度」と「リスク選好」の両方の範囲内で投資するということです。そして、現在のような暴落相場は、それを私たち個人投資家にリアルに教えてくれる機会でもあるわけです。