2020年3月2日

“コロナ・ショック”の最中でも世界経済は動いている



新型コロナウイルス感染症の広がりで世界の株式市場が急落しました。まさに“コロナ・ショック”といった様相で、日本でも混乱や不安が高まっているようです。ただ、私自身はいまひとつピンときません。というのも、“コロナ・ショック”の最中をインドネシアのジャカルタとマレーシアのペナンで過ごしているからかもしれません。まだこちらはそれほど大きな混乱もなく日常生活が続いています。逆に東南アジアの街を歩いて感じたことは、“コロナ・ショック”の最中でも世界経済は動いているという実感です。

インドネシア、マレーシアともに新型コロナウイルスへの警戒はそれなりにしているようで、マスク姿もちらほら見かえるようになったり、建物に入口にアルコール消毒液が設置されたりはしています。また、一部の企業や施設では入館時の体温チェックも始まりました。外国人の場合、問診票への記入を求められたりもします。それでもまだまだ平常運転といった風で、現地の人たちは普段通りの生活をしています。逆に神経質になっているのは日本人や韓国人、中国人など外国人たちです。

それよりも興味深かったのは、新型コロナウイルスに警戒しながらも、あいかわらず新興国の人たちの旺盛な消費です。ジャカルタには行きつけの日本料理屋が何軒かありますが、私がインドネシアを初めて訪れた約10年前は、それこそ客は日本人ばかりでした。ところが現在は圧倒的にインドネシア人の数が多い。それこそ定食で1000円ぐらいするのですが、それを楽しむだけの購買力が現地の人々についてきたのです(逆に安く食べることのできるショッピングモールのフードコートに日本人駐在員らしき姿が増えています)。

マレーシアのペナン島も同様です。日曜日にお土産を買おうと思い、プラザ・ガーニーという高級ショッピングモールに行ったのですが、大変な盛況ぶりです。高級ブランドショップだけでなく、入居しているユニクロも相変わらずの人気。レストランも大変込んでいました。高級店だけでなく安い飲食店もたくさんあり、日本の吉野家とはなまるうどんは人気です。

つまりこういうことです。コロナ・ショックで一時的に世界の株式市場が急落しても、実際の世界経済は今日も動いている。日本企業も例外ではありません。ユニクロは今日も各国で売れているし、吉野家の牛丼も各国で食べられているわけです。日本、あるいは中国や韓国、イタリアだけが世界ではありません。世界中の人々がこの瞬間も物を生産し、消費している。その総体が世界経済です。世界中で今日も続いている生産と消費。そして“コロナ・ショック”で急落した株価。はたして現実はどちらでしょうか。

プラザ・ガーニーからホテルに歩いて戻る途中、あまりの暑さで、つい日陰を求めてロードサイドのレストランに逃げ込みました。そこで昼間から海を眺めながらビールを飲むという贅沢を楽しんだとき、このビールの美味さと海と空の青さこそ現実に他ならないと確信します。



今後、“コロナ・ショック”がどのように展開していくのかは誰にも予想できません。それでも過度に悲観していません。なぜなら、こうやって世界に出てみると、世界経済の存在というものが確実な手触りのあるものとして感じられるからです。だから私は相場が急落した時にはいつも言います。「相場のことなど忘れて、南の島にでも行こう!」と。

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