サイト内検索
2020年2月20日

DCを通じて投資が当たり前になる日―2020年2月の個人型確定拠出年金(iDeCo)積立と運用成績



あいかわらず新型コロナウイルス感染症の流行で心配な毎日が続いています。最近はしゅっちゅう手洗いをするようになりました。こんな状態だと投資どころではないですが、それでも自動的に給料天引きで積立投資を実行してくれるところが個人型確定拠出年金(iDeCo)の便利なところです。SBI証券のオリジナルプランで拠出・運用しているiDeCoの2月の買付(1月拠出分)が約定しました。そのiDeCoのほかに企業型を加えた確定拠出年金(DC)ですが、ジワジワと地殻変動が起こっているようです。いよいよ日本でもDCを通じて投資が当たり前になる日が近づいてきたのかもしれません。

SBI証券のiDeCoオリジナルプランで買付けたファンド・商品は以下の通りです(カッコ内は信託報酬)。いつも通りのポートフォリオとなっています。

【個人型確定拠出年金(SBI証券iDeCoオリジナルプラン)】
「三井住友・DCつみたてNISA・日本株式インデックスファンド」(0.16%)
「DCニッセイ外国株式インデックス」(0.189%)
「EXE-i新興国株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.131%程度)
「EXE-iグローバル中小型株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.104%程度)
「野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)」(0.14%)
「三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド」(0.34%)
「三井住友・DC外国リートインデックスファンド」(0.27%以内)
「あおぞらDC定期」

新型コロナウイルス問題の影響で最近は相場も軟調ですが、それでも2月18日段階での累積収益率は21.0%となっていますから、まだそれほど大きな下げにはなっていないということが分かります。そんな中、DCに関して興味深いニュースがありました。1月にDC専用ファンドの中のバランス型ファンドに1000億円を超える資金流入があったそうです。

DC専用ファンド(2020年1月)、バランス型に1,000億円を超える資金流入(モーニングスター)

これは突出した数字ですから、背景に何か大きな出来事があったとみて間違いありません。この点に関してモーニングスターは「新規にDC制度が導入された、または、元本確保型商品から投資信託へのスイッチングが行われた可能性がある」と分析しています。

18年5月から改正DC法が施行されたことで「指定運用方法(加入者が運用方法を指定しなかった場合に、自動的に掛金を運用する商品。いわゆるデフォルト商品)」の選定・提示が始まっています。DCでは従来、運用指図をしなかった場合は定期預金など元本確保型商品で運用することになっていました。ところが改正DC法ではデフォルト商品の決定にあたって「長期的な観点から、物価その他の経済事情の変動により生ずる損失に備え、収益の確保を図るためのものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものでなければならない」と新たに定められました。そして年金局長通知で労使合意を前提に株式や債券など複数の資産にリスク分散した商品もデフォルト商品として設定できることが明記されています。

つまり、バランス型インデックスファンドなどもデフォルト商品として設定しうるとなるわけです。この年金局長通知と改正DC法の条文を照らし合わせると、現在のような低金利下ではDC加入者の「物価その他の経済事情の変動により生ずる損失に備え、収益の確保を図るため」には、デフォルト商品は定期預金など元本確保型商品よりも、リスク分散されたバランス型インデックスファンドの方が好ましいという解釈も可能になります。このため個人型、企業型いずれでもDCのデフォルト商品にバランス型ファンドを設定する金融機関が増えています(例えばiDeCoの場合、楽天証券はデフォルト商品に「楽天・インデックス・バランス(DC年金)」を指定しています)。

今回のバランスファンドへの大規模資金流入は、おそらく企業型DCでデフォルト商品にバランスファンドを指定するプランをどこかが導入した、もしくは既存プランでもデフォルト商品をバランス型ファンドに変更したところがあり、そのため大規模なスイッチングが発生したのではないかということになります。おそらくそうなのでしょう。

こうした動きが今後も加速すれば、日本での投資をめぐる風景は一変する可能性がります。とくに企業型DCの場合、多くの加入者が制度に対する理解不足によってうまく運用指図ができず、結果的に元本確保型商品での運用になっているというケースは少なくありません。しかし、デフォルト商品にバランス型ファンドが設定されれば、そういった加入者も投資信託による運用に結果的に参加することになります。

これは既に欧米で起こったことです。よく欧米は日本よりも金融資産におけるリスク資産の割合が高いと言われますが、それは特段に欧米人の方が日本人よりもマネーリテラシーが高いからではありません。ただ、欧米の場合は米国の401Kのような確定拠出型年金制度が充実しており、しかもデフォルト商品にバランス型ファンドなど設定されているケースが増えていました。これによって結果的に欧米諸国の方が金融資産に占めるリスク資産の割合が高くなっているという側面もあるのです。

こうした流れがいよいよ日本でも本格化するのかもしれません。まさに「DCを通じて投資が当たり前になる日」が近づいているように感じます。

【ご参考】
iDeCoに加入する場合、金融機関によって手数料や商品ラインアップが異なることに注意が必要です。現在、iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券セレクトプラン、楽天証券、マネックス証券、松井証券、イオン銀行です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランを研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン楽天証券確定拠出年金プランマネックス証券確定拠出年金プラン松井証券確定拠出年金プランイオン銀行確定拠出年金プラン

iDeCoは公的年金を補完する制度ですから、これを活用する前提として日本の公的年金制度について勉強することを強くお勧めします。この点に関しては、権丈善一先生の『ちょっと気になる社会保障』が最良にして必読の入門書です。このほど、三訂版『ちょっと気になる社会保障 V3』が刊行されました。また、iDeCoも含めて現在の公的年金制度を徹底的に利用するための戦略書として田村正之さんの『人生100年時代の年金戦略』が非常に網羅的にまとめられていてお勧めです。家計管理から貯蓄・投資、公的年金やiDeCo・つみたてNISA活用までトータルに解説している竹川美奈子さんの『50歳から始める! 老後のお金の不安がなくなる本』も老後資金について“自分ごと”として考えるための方法論を丁寧かつ詳細に論じた優れた入門書です。



iDeCoは制度がやや複雑なので加入を検討する場合は解説書を読んで研究することもお勧めします。解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』『シンプルにわかる確定拠出年金』竹川美奈子さんの『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』大江加代さんの『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』を挙げておきます。





関連コンテンツ