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2019年10月20日
三菱UFJ国際投信「eMAXIS Slim」ブロガーミーティングに参加―金融機関の事業コスト構造が問われる段階に
先日、東京で開かれた三菱UFJ国際投信のブロガーイーティングに参加しました。ミーティングは4回目ですが毎回東京での開催なので、私のような地方在住者はなかなか参加できません。ところが今回からオンラインでの参加も可能になったので、地方からの参加のハードルもぐっと下がりました。三菱UFJ国際投信さんの地方在住者に対する心使いが素晴らしいです。もっとも私の場合、たまたま東京に行く用事があったので今回は現地で参加することに。初めて参加したミーティングですが、なかなか白熱した意見交換ができました。とくに印象深かったのは、現在のインデックスファンドの低コスト競争は金融機関の事業コスト構造が問われる段階に突入したということです。
今回のブロガーミーティングの内容については参加された多くのブロガーさんが詳細なレポートをアップしています。例えば青井ノボルさんのブログを読むと、ほぼ内容がすべて網羅されています。
S&P500引き下げ直後のブロガーミーティングに参加(インデックス投資で長期縦走へ)
新たに付け加えることあまりないので、ここではもっとも印象深かったポイントについて書いておこうと思います。それは「eMAXIS Slim」が進めている「業界最低水準の低コストを追求する」という戦略が、ついに運用会社や販売会社など金融機関の事業コスト構造を見直さなけば持続できない段階に入ったのだということです。
これはミーティング冒頭の三菱UFJ国際投信、代田秀雄常務の挨拶からも明確に読み取れました。インデックスファンドに限らず投資信託というのは長期保有が前提の商品ですから、いくらコストが低くても持続性がなければ意味がありません。つまり、コストを引き下げるためには、金融機関側にそれでもファンド運営を維持できるだけの収益構造が必要なのです。その方法の一つは純資産残高を拡大させることであり、そのために受益者とのリレーションシップを強化することが重要になります。そしてもうひとつは、ファンド運営にかかるコストを根本的に見直し、ローコストオペレーションを可能にするような事業コスト構造の改革が必要になります。
今回のミーティングでは、その一つとして指数算出会社に支払うインデックス使用のライセンスフィーの引き下げ交渉を行ったことが紹介されました。この点については質問もしましたが、日本の運用会社が指数算出会社に支払うライセンスフィーは会社ごとの契約とのこと。ということは、例えば運用資産の規模などに応じて各社バラバラだということが容易に想像できます。そして日本のインデックスファンドは米国と比べるとまだまだ小規模ですから、恐らくブラックロックやバンガードが支払っているフィーよりもかなり割高になっているのではないでしょうか。これが日米のインデックスファンドのコスト差に影響しているのでしょう(言い換えると、ライセンスフィーの差がコスト差に影響するぐらいまで日本のインデックスファンドの低コスト化が進んだという喜ばしい状況があります)。
その意味で三菱UFJ国際投信が指数のライセンスフィー引き下げを指数算出会社に求めたというのは素晴らしい動きです。この点は「さすが天下の三菱だ」と思いました。同時に、この問題はもはや三菱UFJ国際投信だけで対処するような問題ではないような気がしました。インデックスファンドを運営する運用会社はすべてが取り組むべき問題です。そして、指数算出会社に対してフィー引き下げの要求をするためにも、やはり純資産残高の拡大が不可欠だということが分かります。やはりインデックスファンドは装置産業ですから「規模こそが力」なのです。
もう一つのポイントは、ファンドの信託報酬を引き下げても運用会社として収益を確保できるような運用会社側の事業コスト構造をどうやって作っていくかという問題です。この点に関してもいろいろ意見を言わせてもらいました。そのひとつがファンドのリストラです。現在、日本では一つの運用会社が同じ指数に連動するインデックスファンドをいくつも運営しているケースが多い。しかも信託報酬が時代遅れの水準に高止まりし、おまけに純資産残高も低水準でまったく増えていないものもあります。しかし、こうしたファンドにも維持・管理コストがかかっているはずです。これを減らせば、運用会社の収益構造の筋肉質化の役立つはずです。
ただし、ファンドを減らすためには繰上げ償還するかファンドを合併するかしかありません。繰り上げ償還は受益者に迷惑をかけることになり、ファンド合併は原理的には可能でも具体的なハードルが高い。膨大なシステム投資をどうするかという問題もある。こうした課題を三菱UFJ国際投信の代田常務は率直に答えています。非常に難しい問題だと思います。ただ、「ファンドの数は減らしたい」という大きな方向性は代田常務も持っているとのことで、まずはマザーファンドの統合などから検討したいとの答えを得ました。ファンドの維持・管理コストはマザーファンドベースで発生しているからです。これはぜひ取り組んで欲しいと思います。また、ファンドの合併を促進するために金融庁など行政が果たすべき役割が大きいとも感じます。
最後に、ミーティングでどうしても指摘したい問題がありました。それは「eMAXIS Slim」ではなく旧来の「eMAXIS」シリーズをどうするのかという問題です。そこでファンド削減問題に関連して質疑の場で「『eMAXIS Slim』と『eMAXIS』の合併を試みられたらどうか」と提案してみました。これに対して代田常務は「eMAXISの購入者は、つみたて・ノーロードファンドの初期のお客様達であり、業界の流れを引っ張ってきた重要なお客様」と強調し、いろいろ検討すると言っていただきました。「eMAXIS Slim」の登場以来、「eMAXIS」とのコスト差は開く一方です。このため「eMAXIS」を保有している受益者は「自分たちは切り捨てられた」という思いすら抱いていることを懇親会の場を含めて代田常務に伝えました。そしてこの問題をクリアした瞬間「三菱UFJ国際投信は日本のインデックスファンド分野で絶対的頂点の地位に立てますよ」とも。代田常務は相当に真剣にこの話に耳を傾けてくれたことが印象的です(同時に「eMAXIS」の信託報酬を引き下げることができない投信業界の構造的要因も代田常務の表情や言葉の端々からうかがい知ることができたのですが)。
このような感じで非常に充実した楽しいブロガーミーティングでした。私も受益者の1人として運用会社と率直な意見交換ができるのは貴重な体験です。三菱UFJ国際投信さんには、ぜひ今回のミーティングで発見したであろう“受益者の声”を大切にして欲しいと思います。
【蛇足】
ミーティング終了後、たまたま帰り道が一緒になったつらおさんとオメガさんの3人で非公式2次会に行きました。有楽町のガード下で飲むといった、なんとなく“東京っぽい”経験ができたのも楽しかったです。