SBI証券のオリジナルプランで拠出・運用している個人型確定拠出年金(iDeCo)の9月の買付(8月拠出分)が約定しました。ここにきてiDeCoへの新規加入者の伸びが再び加速しているようです。いわゆる“老後資金2000万円問題”が影響したとの指摘があります。しかし、この現象にはもっと重要な意味があるように感じます。それは、老後資金の問題を“自分ごと”として考えている人は、既に行動しているという現実です。
SBI証券のiDeCoオリジナルプランで買付けたファンド・商品は以下の通りです(カッコ内は信託報酬)。
【個人型確定拠出年金(SBI証券iDeCoオリジナルプラン)】
「三井住友・DCつみたてNISA・日本株式インデックスファンド」(0.16%)
「DCニッセイ外国株式インデックス」(0.189%)
「EXE-i新興国株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.131%程度)
「EXE-iグローバル中小型株式ファンド」(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.104%程度)
「野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)」(0.14%)
「三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド」(0.52%)
「三井住友・DC外国リートインデックスファンド」(0.27%以内)
「あおぞらDC定期」
8月は世界的に株価も低迷したことでiDeCoの資産評価額もかなり減っていたのですが、9月に入ってからは見事に反転しました。このため9月17日段階での累積収益率は13.7%となり、再び2桁%台を回復しています。もちろん、原則60歳まで換金できないiDeCoにおいて現段階の収益率を気にするのはあまり意味のないことですが、やはり含み益があるというのは気分が良いものです。
そのiDeCoですが、ここにきて新規加入者の増加が再び勢いを増しているという報道がありました。
iDeCoの新規加入者、「年金2,000万円不足問題」が引き金か? 7月に加入者増が加速(モーニングスター「iDeCoニュース」)
これによると7月の新規加入者は再び3万人台を回復し、加入者総数は131万人を超えました。とくに第2号加入者(サラリーマン、公務員)が新規加入を牽引しています。加入者増加の要因はいろいろあるのでしょうが、やはり6月に話題となった“老後資金2000万円問題”が影響した可能性があるとして次のように書いています。
6月には国会等において「老後資金として2000万円が不足する」問題が大きく取り上げられ、「年金」が国民的な関心事に浮上した。7月時点での加入登録者増には、年金問題をきっかけに老後の資産形成を考えた方々が少なからずいることの反映だろう。こうした指摘に対して「メディアの扇動に踊らされている」と揶揄するのは簡単です。実際にそうした側面もあり、“老後資金2000万円問題”をセールストークに利用する金融機関や金融商品ブローカーも少なくありません。ただ、iDeCoの加入者が増加したという現象は、もう少し深い意味があるのではないでしょうか。
そもそもiDeCoはやや複雑な制度設計となっており、加入を検討する際には一定の勉強が必要です。また、いったん加入すると原則60歳まで資金が拘束される流動性の低さ(これは年金である以上当然の性質です)も加入に対する心理的ハードルとなります。そうした問題を乗り越えてiDeCoに新規加入した人が3万もおり、既に加入している人が131万人も存在するということは何を意味しているのでしょうか。それは、老後資金問題を“自分ごと”として真剣に考えた人は、既に行動しているという厳然たる事実です。
日本の公的年金制度など社会保障には様々な課題があることは事実です。しかし、社会保障制度の改革というのは一朝一夕に実現できるものではないし、するべきでもありません(拙速な制度変更は移行コストの増大など改悪要因になる)。ある程度の時間をかけて慎重に取り組むべき課題です。しかし、その間にも私たちは年をとります。多くの人にとっては、制度が改善される前に自身の老後が始まるのです。そういった厳しい現実を直視するなら、それこそ現状に対してブー垂れてる暇があったら、現行制度の中で最善の手段を模索する“戦略”を考えるべきでしょう。それが老後資金問題を“自分ごと”として考えるということです。そして、そういった“大人の判断”をしている人が確実に増えていることを、iDeCo加入者増加という現象が示しているのでしょう。
【ご参考】
日本の公的年金制度について勉強するなら、権丈善一先生の『ちょっと気になる社会保障 増補版』が最良にして必読の入門書です。また、iDeCoも含めて現在の公的年金制度を徹底的に利用するための戦略書として田村正之さんの『人生100年時代の年金戦略』が非常に網羅的にまとめられていてお勧めです。家計管理から貯蓄・投資、公的年金やiDeCo・つみたてNISA活用までトータルに解説している竹川美奈子さんの『50歳から始める! 老後のお金の不安がなくなる本』も老後資金について“自分ごと”として考えるための方法論を丁寧かつ詳細に論じた優れた入門書です。
iDeCoに加入する場合、金融機関によって手数料や商品ラインアップが異なることに注意が必要です。現在、iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券セレクトプラン、楽天証券、マネックス証券、イオン銀行、松井証券です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランを研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン、楽天証券確定拠出年金プラン、イオン銀行確定拠出年金プラン、マネックス証券確定拠出年金プラン、松井証券確定拠出年金プラン
ただ、iDeCoは制度がやや複雑なので解説書を読んで研究するのも良いでしょう。解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』『シンプルにわかる確定拠出年金』竹川美奈子さんの『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』大江加代さんの『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』を挙げておきます。