2019年4月22日

三菱UFJ国際投信によるインデックスファンドのベンチマーク変更が意味するもの



咽頭炎で寝込んでいる間に凄いニュースがありました。既に何人ものブロガーさんが報告していますが、三菱UFJ国際投信がETFを除くインデックスファンドのベンチマークを従来の「配当除く指数」から「配当込み指数」に変更すると発表しました。

ベンチマークの「配当込み指数」への変更について(三菱UFJ国際投信)

そんなことができるとは思ってもいなかったので驚きました。三菱UFJ国際投信は現在、インデックスファンドの分野で最も勢いのある1社ですが、そこがこういった大胆な動きに出たことで、今後はインデックスファンドのベンチマークとして「配当込み指数」が一般化しそうです。それによりインデックスファンドという商品の意味合いも大きく変化すると言えそうです。

インデックスファンドのベンチマークとして「配当除く指数」と「配当込み指数」のどちらが優れているのかは議論の分かれるところです。配当除く指数採用ファンドの場合、分配金を出さない限りはファンドの基準価額は配当分だけベンチマークから上方乖離していくのに対して、配当込み指数採用ファンドは運用コスト分だけベンチマークに対して下方乖離していきます。

ただ、ファンドの運用コストと比べて配当収入というのは大きいですから、どうしても配当除く指数採用ファンドのベンチマークからの乖離は配当込み指数採用ファンドの乖離よりも大きくなります。このため受益者から見て配当除く指数採用ファンドは運用精度を確認するのが難しいのです。こうした理由からは配当除く指数よりも配当含む指数をベンチマークとするインデックスファンドを好む個人投資家が少なくありません。

もうひとつ焦点になるのが分配金の存在です。現在、インデックスファンドを購入している若い個人投資家の多くは課税繰り延べ効果を求めているのでファンドが分配金を出すことを好みません。しかし、配当除く指数採用ファンドの場合、ベンチマークに連動した運用を行うというファンドの目的上、基準価額のベンチマークからの上方乖離があまりに大きくなると、それを解消するために分配金を出すのではないかという心配もありました。過剰な課税繰り延べを良しとしない税務当局への忖度があるという都市伝説すらあったくらいです。

これに対して配当込み指数をベンチマークとするインデックスファンドは、やはり指数に連動した運用を行うことを目的とする以上、簡単に分配金が出せません。そんなことをすれば基準価額がベンチマークから大幅下方乖離してしまうからです。このため配当込み指数をベンチマークとするインデックスファンドは事実上、無分配型ファンドとして運用されています。これも長期投資志向の個人投資家から配当込み指数をベンチマークとするインデックスファンドが好まれる理由でしょう。

こうした中、三菱UFJ国際投信がインデックスファンドのベンチマークを「配当込み指数」に変更したということは非常に大きなインパクトがあります。ライバルであるニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし> シリーズ」は当初から配当込み指数をベンチマークに採用していましたから、これで一気にインデックスファンドのベンチマークは「配当込み指数」が主流になるだろうことが予想できるからです。

こうした動きが意味するものは何でしょうか。それはインデックスファンドの位置付けが改めて明確になったことです。配当込み指数が主流になるということは、インデックスファンドは基本的に無分配型ファンドになるということです。つまり、配当収入も含めて再投資による複利効果を最大化することで長期投資をするための金融商品であるという性格が一段と鮮明になります。課税繰り延べに対して税務当局がどのように認識しているのかという問題も、既に金融庁が「つみたてNISA」創設に際して事実上、無分配を推奨した段階で当局間で合意があったと見るべきだったのです。

では「配当除く指数」に存在意義はなくなるのかといえば、もちろんそんなことはありません。それどころか、配当除く指数を採用することでファンドの性質が際立つ商品も出てきます。それがETFです。ETFはインカムゲインをすべて分配金として払い出さなければなりません。定期的に分配金を受け取りながらインデックス投資をしたい投資家にとってETFは非常に魅力的な商品なのです。

今後、若年層を中心とした資産形成層は配当込み指数を採用することで無分配ファンドとなるインデックスファンドを活用し、課税繰り延べも含めて配当債投資による複利効果を最大化することが主流になっていくでしょう。そしてミドル層からシニア層など資産活用層は配当除く指数に連動することで分配金を受け取れるETFを利用するというのも有力な資産運用の方法となります。

こう考えると、今回の三菱UFJ国際投信によるインデックスファンドのベンチマーク変更は、通常のインデックスファンドとETFの違いを一段と明確にし、その利用方法の違いも明確にするという副次的な効果ももたらすような気がします。

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